【5】盲導犬育成システムの多様化
[1]社会福祉基礎構造改革と盲導犬育成事業の変化
盲導犬事業は、新しい21世紀の福祉システムを探った社会福祉基礎構造改革の論議を経て、社会福祉事業法等の改正案において法定化される見込みであり、今後の盲導犬事業に大きな変化をもたらすと考えられる。しかしながら、厚生省が行っている「障害者の明るいくらし促進事業」に規定される盲導犬育成事業がどのように変わるか、今の時点で不明確な点も多いが、いずれにしても“変化”は早晩やってくる。盲導犬訓練施設としてもこの変化に対応すべく自らが提供するサービスについて検討する必要がある。
[2]歩行指導方式と盲導犬利用の多様化
(1)歩行指導方式
国際盲導犬学校連盟の資料(1998)によれば、歩行指導の全課程が訓練施設で行われたのは、1,927ユニット(73.4%。97年は、72.2%)、一部施設で、一部家庭で行われたのは、341ユニット(13.0%。97年は、18.0%)、全ての課程が家庭で行われたのは、358ユニット(13.6%。97年は9.9%)である。残念ながら、日本における類似の資料はない。それぞれの盲導犬訓練施設の考え方によって、訪問指導方式に取り組んでいる施設、取り組んでいない施設、さまざまである。
本調査においても、一般視覚障害者が盲導犬を希望しない理由として、「訓練の時間が取れない」という理由が、全体の4%で第6順位に挙がっている。「盲導犬を使用することを迷っている」と回答した“第二”潜在需要層とも呼ぶべきグループを見ると、「世話が大変」35.9%、「現状に満足している」13.8%に次いで、「訓練の時間が取れない」が11.5%と、無視できない比率を占めている。このように考えている人たちには、訪問訓練など適切な対応策を講じることで、“第一”潜在需要層に移行させることが充分に可能であると考えられる。したがって、宿泊方式と訪問方式の2つの方法を提供していくことが盲導犬利用希望者のニーズに応え、盲導犬の普及促進に繋がるサービスといえる。
(2)盲導犬歩行スタイル
現在、我が国には次の3タイプの盲導犬歩行スタイルが混在している。
スタイルa
盲導犬ユーザーは、常にハーネス(誘導具)を左手に持って道路の左端を歩行する方法
スタイルb
道路状況により、道路の左端もしくは右端を通行し、道路の左端を通行する場合にはハーネスを左手に、道路の右端を通行する場合には右手に持ち替えて歩行する方法。
スタイルc
ハーネスは常に左手に持つが、道路状況により、道路の左端もしくは右側を歩く方法