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(3)訓練犬の質の向上

優れた繁殖犬の維持・改良が可能となり、質の高い訓練犬を安定的に供給できれば、盲導犬育成事業の大部分は保証されたようなものである。訓練士の多くは担当した犬の全責任を負うと感ずるようになる。成功した場合それが自信や誇りとなることもあれば、失敗によって自責の念に駆られることもある。このような積み重ねが訓練士の熟練となっていくのであるが、一方では経験の浅い訓練士が良質な犬を与えられることによって優れた盲導犬を育成することがある。それらの犬はユーザーにも喜ばれる場合が多いことを考えると、訓練技術の鍛練と共に繁殖技術の充実は欠かせないものといえる。

盲導犬育成事業の土台がしっかりすれば盲導犬訓練士の養成や定着率も改善されるであろうし、盲導犬ユーザーのさらなる拡大も期待される。初めは大きかった投資も繁殖、パピーウォーキング、訓練、フォローアップそして訓練士の養成など各分野での省力化とコストダウンに繋がり、何より視覚障害者にその利益をもたらすことになるだろう。現状ではここまで到達できないことが問題点となっている。

 

[2]繁殖システムの実例

ここでは北海道盲導犬協会の繁殖システムを紹介する。繁殖担当者Aは盲導犬訓練士であり、歩行指導員であり犬舎管理要員であり、啓発要員であり、獣医資格がある。補助者Bは獣医でないことを除けばAと同じである。

 

1]繁殖計画

・Aは台雌の個別データとシーズンカレンダー及び交配可能な種雄の一覧表を作成

・事業計画に基づく育成頭数÷訓練成功率0.8=必要訓練頭数

必要訓練頭数÷適性検査合格率0.65=必要仔犬頭数

必要仔犬頭数÷平均出産頭数6=出産回数

出産回数÷受胎率0.8=交配件数

交配件数×1.5=必要台雌頭数

・全体会議でペアリングの決定/外部導入、外部交配、後継及び改良計画の検討

 

 

 

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