日本財団 図書館


【3】共同繁殖センター構想

 

1 共同繁殖センターの基本スタンス

現在、盲導犬訓練施設は日本に8法人あるが、設立時のそれぞれの事情や地域性、運営方針などの違いがあり、一概に全てを一本化することは難しい。また、今後の盲導犬育成事業を考えると、それぞれに見解の違いもある。しかし、ここではそうしたこれまでの法人単位の事情や既成の概念にとらわれることなく、盲導犬ユーザーの利益を第一に考え、各法人がつちかってきたノウハウや情報を共有し、より良い盲導犬の安定供給を目指す「共同繁殖センター(仮称)」の検討を行った。

この「共同繁殖センター(仮称)」の実現のためには、盲導犬訓練施設8法人を中心に、盲導犬育成事業関連の各団体が協力し合い、互いの情報開示・支援の姿勢をつくることが前提となる。

 

2 共同繁殖センターの必要性

 

[1]繁殖システムと現状における問題点

本調査において盲導犬訓練施設8法人全てが繁殖システムを持っていると回答している。アメリカのGuide Dogs for the Blind, Inc.が1999年8月にまとめた「犬の繁殖調査」(Dog Breed Survey)では回答を寄せた55校のうち45校(82%)でこのシステムがあると答えており、繁殖センターを必要とする認識の高さがうかがえる。それぞれのシステムの内容を知ることはできないが、その目的と問題点を本調査の回答や年次報告等をもとに考察した。

 

(1)盲導犬の安定的な供給

盲導犬事業を円滑に継続する上では盲導犬の安定的供給が第一の目的となる。日盲社協年次報告97によると、繁殖犬の保有数は、多い盲導犬訓練施設で20頭、少ない盲導犬訓練施設で1頭とかなりの開きがあるが、全国8法人で74頭の繁殖犬(1施設平均9.3頭)を管理し、34回の出産(同平均4.3回)があり、231頭の仔犬(同平均28.9頭)を出産させている。繁殖犬に占める台雌の数が明らかではないが、この数字は各盲導犬訓練施設の最大限の繁殖能力を引き出したものではなく、年間に訓練し歩行指導に供することができる体制、すなわち歩行指導員数と各盲導犬訓練施設の盲導犬になるまでの成功率を勘案して計画的に繁殖させたものと思われる。この数字から見ると現状での供給体制は十分機能しているように見えるが、実は少なくとも2つの問題がある。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION