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[2]盲導犬訓練施設に関わる具体的な諸問題

 

(1)繁殖

盲導犬訓練施設8法人は全て繁殖システムを持っている。しかし、多くの盲導犬訓練施設は現在保有する繁殖犬に質的な問題を感じている。また、新たな繁殖犬の入手についても大きな困難を感じている。

盲導犬訓練施設8法人が保有する繁殖犬は83頭(♂31頭、♀52頭)。犬種別に見ると、ラブラドール・リトリバー種が最も多く64頭(♂24頭、♀40頭)、次いでゴールデン・リトリバー種18頭(♂7頭、♀11頭)で、この2種類で98.8%を占める。他の犬種としてはジャーマン・シェパード種1頭(♀1頭)がいるだけである。これらの犬は最少年齢1歳から、最高年齢11歳まで分布しており、雄犬の交配可能年齢は1.5歳〜10歳、雌犬は1.5歳〜8歳と考えられている。

 

表2. 盲導犬訓練施設8法人が保有する繁殖犬

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一方、日本盲人社会福祉施設協議会盲導犬委員会の1997年の年次報告(以下、日盲社協年次報告97)によれば、各盲導犬訓練施設の繁殖についての取り組みに大きな違いが見られる。例えば、繁殖犬の保有では、多い盲導犬訓練施設で20頭、少ない盲導犬訓練施設で1頭、平均で9.2頭である。これらの繁殖犬を用いた自家繁殖件数は、多い盲導犬訓練施設で8回、少ない盲導犬訓練施設で1回、平均で4.3回となっている。

また、出産頭数は、多い盲導犬訓練施設で70頭、少ない盲導犬訓練施設で6頭、平均で28.9頭である。さらに盲導犬訓練施設は、寄贈や購入という方法によって候補犬を取得しているが、多い盲導犬訓練施設で17頭、少ない盲導犬訓練施設で3頭、平均で8.3頭である。盲導犬訓練施設個々の自家繁殖率(自家繁殖取得数/(自家繁殖取得数+寄贈・購入数))を見ると、最も高い盲導犬訓練施設は95.9%、逆に最も低い盲導犬訓練施設は27.3%と、かなりの開きがあり、平均すると77.8%となる。ラブラドル・リトリバーとゴールデン・リトリバーの異種間交配を取り入れている盲導犬訓練施設は4法人である。

本調査で成功率(盲導犬としての合格率:以下成功率と表示)の回答を求めたが、平均値(95年度47.4%、96年度43.6%、97年度51.4%)が明らかになっているだけで、個々の盲導犬訓練施設の成功率は不明である。ここで注意しなければならないことは、成功率が低いことがその盲導犬訓練施設のサービスの質が低いことを意味しないし、成功率が高いことがその盲導犬訓練施設のサービスの質の高さを意味しないということである。しかし、資源の有効活用という観点から見る場合に成功率の低さは無視できない問題であり、今後積極的に取組むべき課題と思われる。

 

 

 

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