4. RR73における調査研究の成果
日本造船研究協会RR73基準研究部会では、FPにおけるSOLAS第II-2章の総合見直し及び関連する検討事項に対応して、調査研究を実施してきた。平成7〜8年度にはRR733小委員会を設置し、また平成9年度からはSOLAS/II-2総合見直しWGを設置して、IMO・FPにおけるSOLAS条約第II-2章総合見直し及び新II-2章案構築に対応して来た。
その間の調査研究と実施年度及び成果の活用をまとめて表4に示す。その内、新II-2章案の構築に関係した研究の主な成果とそのIMO・FPへの寄与を以下に述べる。
(1)火災荷重の制限及び可燃物の使用に関する検討(平成6〜9年度)
実船の居住区域に設置されている可燃材料を調査し、単位床面積当たりの可燃物の質量(火災荷重)に関する情報を得た。また、その調査結果を基に、船室の実大模型を燃焼する火災試験を実施して、火災時に発生する発熱量と室内温度のデータを得るとともに、使用した材料個々の発熱量を試験により求め、火災荷重と火災時の発熱量の関連を得た。これらの資料はFP及びそのCGで検討され、火災荷重に関する規則及び火災荷重の算定方法策定に利用された。
(2)火災時に発生する煙の制御方法に関する試験(平成2〜8年度)
シップ・アンド・オーシャン財団の旧筑波研究所の敷地を拝借し、廊下、船室及び階段室からなる3階規模の実大居住区モデルを建設して、火災時に発生する煙の流動状況及びその煙の制御方法の効果を実験的に把握した。また、煙の流動を数値計算するソフトウェアを建設省建築研究所と共同して作成し、火災時の船内の煙の流動を予測し、実大試験結果と比較した。これらの資料はFPに提出され、煙の制御に関する規則案及び煙制御設備の技術基準案作成に寄与した。
(3)新防火規則の構築(平成7〜11年度)
FPが設置したSOLAS/II-2章総合見直しCGに対応して、新II-2章案及びFSSコード案を作成する作業を実施してきた。また、平成7年度から10年度までは、当CGの幹事国として、FPメンバー各国からの新II-2章案へのコメントの取りまとめ、案文の配布、及びFPへ提出するCGの報告文書の作成作業を行ってきた。
(4)火災感知・消火活動及び避難の関連の検討(平成7〜8年度)
火災感知器の設置場所、換気流、火災性状等と火災感知器の感知能力を実験的に求めるとともに、煙の流動及び人の避難の動きを綜合的に解析して、火災感知・消火活動及び避難の関連について検討した。その成果は、我が国の新II-2章の火災感知及び避難安全に関するコメントの基となった。
(5)可燃材料・消火設備及び防火仕切りの関連に関する検討(平成7〜11年度)
通常のB級防火隔壁あるいはアルミ合金製の隔壁からなる実大船室に内装材及び家具・寝具類を施工し、各種のスプリンクラ(通常型、速動型、ウォータミスト型等)を設置して、実大火災消火試験を実施した。その結果から、スプリンクラ等の消火装置の効果、防火隔壁の性状、火災室内の温度及び火災による燃焼発熱量の資料を得た。その成果から、新II-2章のPart B、C、D及びFの関連を検討した。
(6)防煙仕切りの性能基準に関する検討(平成9〜11年度)
B級仕切り、B級防火戸及びB級には達しないが、遮煙効果があると考えられる仕切り及び戸について、実大の居住区モデルによる遮煙性能試験を実施した。また、それらの戸及び隔壁について、ISO等の防煙戸の性能試験に準じた防煙性能試験を実施した。それらの結果に基づいて、煙の制御に使用する防煙仕切り及び防煙戸の性能基準案をFPに提案した。