沖縄で行われた駆除の実績(1300万匹を6億円で駆除)から、1匹のオニヒトデを駆除するのに40〜50円くらいの費用がかかると見積もられます。しかもこの結果は失敗であったというのが大方の評価です。一方、今回の調査結果では300〜1400円/匹、面積あたりでは10〜20万円/haという数値が出ていますが、同様にオニヒトデを完全に駆除できたわけではありません。
駆除は通常何度も行うことが必要になります。駆除域にオニヒトデが外から入り込んでくるし、幼生も加入してくるからです。ですから、駆除の努力は何年も継続しなければなりません。オーストラリアのグレートバリアーリーフでの試算では、2−4ヘクタールの面積を守るために3年間で150万円から1,500万円くらいの費用がかかると計算されています。
6. 情報のフィードバックと蓄積
将来、オニヒトデ駆除をより効果的におこなっていくためには、オニヒトデの密度・分布、さらにオニヒトデの駆除についてのデータを蓄積し、多くの人に利用可能な状態にしておくことが必要です。駆除の場所、日時、駆除に参加した人数、駆除したオニヒトデの大きさ、数などは基本的で重要な情報です。さらに、駆除域における駆除前後のオニヒトデ密度、分布調査・駆除の具体的方法、オニヒトデ被害の程度・面積的規模・深度、投入した労力・費用などの記録が蓄積されればとても役立つ情報となります。
これらの惰報は、よりよいマニュアルの作成のためにも不可欠です。
しかし、現在のところ、一部の海中公園を除いてはオニヒトデの情報を一元的に収集、分析し、サンゴ礁の保全に役立てる体制が存在しません。また、オニヒトデにかぎらず沖縄県全域のサンゴ礁をカバーするモニタリング体制も存在しません。さらに、現在沖縄ではオニヒトデの生物学に関する研究は非常に限られています。この現状は、オニヒトデは沖縄にとってかけがえのない財産であるサンゴ礁に対する最も重大な脅威のひとつであることを考えると決して満足できるものではありません。