それまでの間のサンゴモ食期の稚ヒトデの密度を調べることができれば、誕生後約2年後に15-20cmほどの成体となってサンゴを食害するオニヒトデの大量発生を予期できるのではないかと期待されます。大量発生があらかじめ予測できれば、駆除の体制を整える時間的な余裕が出てきますのでサンゴを食べられる前にオニヒトデ駆除が成功する確率も高くなります。
サンゴモを食べているころの稚ヒトデは小さくて見つけるのが簡単ではありませんが、10月頃になれば直径が5mmくらいには成長し、探し出すのが多少は容易になります。その時期の稚ヒトデはサンゴ礁の沖側の斜面やその周辺でサンゴの礫が堆積しピンク色のサンゴモがそれを覆っているようなところと言われています。稚ヒトデも直径数mmの白い食痕を残しますのでそれを目当てにして周囲を探すとサンゴモの色にそっくりな稚ヒトデが見つかります。
稚ヒトデを見つけるにはかなりの経験と根気が必要ですが、頻繁にダイビングで利用する特定のサンゴ礁などでオニヒトデの大量発生を予測するための有望な方法であると言えます。
5. オニヒトデ食害からの防御のためにいくらかかるか
パトロールのために
先に述べたように、パトロールにはいろいろな方法があります。例えば今回行った現地概略調査では、オニヒトデの相対的な密度を10分間の遊泳で観察される個体数を比較することで調べました。3人のダイバーがそれぞれ、1m/秒の速度で、幅10mを観察しながら10分間遊泳すると、18,000?の面積がカバーされます。これを、一日に4地点で繰り返すとして、7200?(=7.2ha)。この作業にかかる費用の概算は、直接経費(人件費、傭船料、車借り上げ、日当宿泊費)で14万円として、約2万円/haとなります。ちなみに沖縄県全域でのサンゴ群集の合計面積は礁池内だけで28,000haと見積もられています。
駆除のために
オニヒトデを駆除するための費用は、守るべきサンゴ礁の広さ、海岸線からサンゴ礁までの距離、使用する船舶、サンゴ礁の水深・地形、駆除作業をするダイバーの人数、能力、人件費、オニヒトデの分布密度などによって大きく異なります。費用の見積は、オーストラリアでは40〜3000円/匹と幅広い金額が報告されています。