沖縄では、“正常な”密度と“異常な”密度との境目が曖昧になってきているといわれています。つまり、オニヒトデの大量発生が慢性化しているのです。
では、なぜオニヒトデは突然に大量発生するのでしょうか。世界中で生物学者が研究してきましたが、残念ながら、それはまだ良くわかっていません。これは、ひとつには自然のサンゴ礁でのオニヒトデの生活史がまだよくわからないからです。オニヒトデの天敵のホラガイを人間が乱獲したこととか、陸域から農薬などが沿岸に流れ込んでオニヒトデの幼生を食べる動物プランクトンが減少したからだとか、さまざまな説が提唱されました。現在のところ、大量発生は自然現象ではあるが、水質の悪化やサンゴ礁の埋め立てや魚の乱獲などの人為的な影響でその頻度と厳しさが増大したのではないかと考えられています。特に、沿岸海水の富栄養化によりオニヒトデのプランクトン幼生の餌となる植物プランクトンが増殖するためではないかという見方が有力です。
大量発生の原因がまだわからないため、大量発生を未然に防ぐ技術はいまのところ存在しません。
オニヒトデの大量発生は、自然現象なのであるから人間が勝手に干渉するべきではないという議論が根強くあります。しかし、人為的要因による影響の可能性は否定できません。また、サンゴ礁は沖縄の水産業や観光業にとってかけがえのない財産であ以サンゴ礁が作る美しい景観は人類のたからです。また、サンゴ礁の多様な生物はまだまだよく研究されていません。そのような意味で大切なサンゴ礁を選び、そこだけはぜひオニヒトデによる被害から守ろうという強い要望が生じます。
2. オニヒトデ駆除を成功させるために
沖縄はじめオニヒトデの彼害がおこった多くの国々では駆除事業がさかんに行われてきました。しかし、大規模なオニヒトデ駆除はほぼすべて失敗に終りました。沖縄でも1970年から1983年にかけて6億円を投入し、1,300万匹のオニヒトデを駆除しましたが結局ほとんど全てのサンゴ礁がオニヒトデの大量発生による破壊的な被害を受けました。