第5章 ケーススタディー
(1) 背景と目的
沖縄ではこれまで多額の予算を投入しオニヒトデの食害からサンゴ礁を守るためにオニヒトデ駆除が行われてきたが、オニヒトデの個体数は記録しても、駆除がオニヒトデ個体群に及ぼす影響は充分に調査されてこなかった。そこで、今回の調査では異なる方法で駆除ケーススタディーを実施し、その効果を比較し、より有効な駆除方法を考察した(4-2)。この章では、ケーススタディーとして実施した駆除の実績を記載する。
(2) 方法
i. 本事業の「現況調査」と、漁協や村役場の協力を得て、近辺のダイビングショップなどの支援態勢を考慮すると、残波岬は駆除ケーススタディーを行える唯一の場所と判断した。残波岬周辺裾礁上で同等の面積でオニヒトデ密度やサンゴ被覆度、地形などの条件が類似する地点A、Bを実験区域として選択した。駆除範囲を岸と平行な200mを一辺とし、岸と垂直な直線で波打ち際から水深20mまでを一辺とする長方形とした。ただし、最深部分については、20m以浅でも海底がオニヒトデが分布しない砂質となる場合はその水深までとした(4-2の図1参照)。駆除範囲は海岸近くに設置したウキで目印をつけ、さらに海底に海岸に垂直に設置したロープでダイバーに示した。
ii. 地点Aでは12人が一度に駆除した。一方、地点Bでは努力量を分散させ、4人による駆除を時間を置いて3度行った(表1)。
iii 駆除は読谷村で通常駆除活動に従事しているダイバー(職業ダイバーおよびダイビングインストラクター)により、通常実施している方法によった。良く慣れた方法を採用することで、効率が高く、しかも安全な作業が行われると期待した。つまり、ボートで駆除域に赴き、スキューバにより潜水し、鉤あるいは鈷でオニヒトデを採取し、それを水中に持ち込んだ網製の袋に入れ、袋が一杯になったところで袋を適宜ボートで待機している人に渡した。駆除は、それぞれの場所で全ダイバーが一斉に40分間のダイビングを行い、休息をはさんで再び全員一斉に2度目の40分間ダイビングにより行った。オニヒトデは漁港に持ちかえり、トラックに積み、運搬しバックホーで掘られた穴に埋めた。
(3) 結果
A、B域で行った駆除の結果は表2のようであった。第一回目の駆除では、一度に駆除したA域ではB域の3倍の駆除努力量を投入したにもかかわらず、また、駆除前の個体群密度が同様であるにもかかわらず、駆除個体数はB域よりも少なかった。また、B域では、時間を置いた複数回の駆除で駆除努力量が同じであるにもかかわらず駆除個体数が大きく変動した。第二回目の駆除では、第一回目の駆除数(310)から73と大きく減少したが、第3回目では231と増大した。