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(4) 考察

今回は冬のクロロフィルa濃度に関するデータを得た。これは、過去に沖縄で測定されたクロロフィルa濃度と比較して、低い傾向にあった(図2、添付資料9-2)。もっとも、これらの値は、複数の年次に亘り、異なる季節に得られたものであり、さらに、測定方法等もばらばらなので一概に比較することはできないため、さらにデー夕を蓄積する必要がある。

また、一般に貧栄養の海水中には大型の植物プランクトンは少なく、ほとんどは2μm以下のラン藻類が主である(Tada 1999)。そのため、今回は、1.2μmのGF/Cフィルターで濾過したため、測定値が低い結果となった可能性がある。

 

図2. 今回測定されたクロロフィルα濃度(↓)と過去に沖縄沿岸で測定された濃度。

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今回の測定では、恩納村沿岸と、ヤンバル東岸の両地域の間に有意な差が認められなかった。また、測定値はオニヒトデ幼生が生育するに必要な濃度ではなかった。別の季節にはまた異なる濃度を示すと考えられる。今後大量発生を予測して行くに当たっては、オニヒトデ幼生の産卵時期(6-7月)における、植物プランクトンのクロロフィル濃度のモニターが有効となろう。そのためには、このような項目を含めたモニタリング体制をつくり、さらに継続してデータを蓄積する必要がある。

また、クロロフィル濃度がオニヒトデの大量発生を左右するのではないかという推定は、少なくともオニヒトデのプランクトン幼生が沖縄島の沿岸に分散してくることを想定している。しかし、分散に影響を与える海流や潮流についても知見が乏しい。この分野の研究も待たれる。

さらに、将来オニヒトデの浮遊幼生そのものを計測できる手法(モノクローナル抗体による測定)が開発されれば、オニヒトデの大量発生を予測する上で、より直截な情報を提供することになると期待される。

 

 

 

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