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横地(1995)によれば、西表の海域では、オニヒトデは月齢3ヶ月ころの9月(直径4.3〜10.2mm)までは全ての個体がサンゴモ食で、翌10月には一部の個体がサンゴ食へと変換し、12月ころには(月齢6ケ月)ほとんど全ての個体(99.2%)がサンゴ食への変換を完了した。

1986年産卵群については、1987年5月までには食性を変換し平均直径が35mmに達する。この後成長は速くなり、11月までには直径86mm、1988年7月には160mm。その後、成長速度は穏やかになり、1988年11月に直径は163mm。変異係数は、個体数の少なかった時期を除くと0.15から0.29と小さく、成長段階を通じて成長の個体間のばらつきは少ない(波部ら1989)。

横地(1995)は、西表海域での稚ヒトデの成長と過去に報告された飼育下での成長曲線(Yamaguchi 1974, Lncas 1984, Zann et al. 1987)を比較して、成長速度の違いは水温や餌条件が稚ヒトデの成長に影響を及ぼすと考えた。オニヒトデは栄養状態などの条件により成長が大きく左右されるため、必ずしも年齢を反映しないと考えられている(Dana, Newman & Fager 1972, Branham 1973*, Yamaguchi 1974)。年齢査定に棘の成長線の観察も試みられている(Stump & Lucas 1990)。

成熟については、オニヒトデは満2年あるいは3年で、直径150mm程度に成長できるような条件下であれば、成熟し繁殖に参加できるようである。また、逆に条件に恵まれて早く大きくなれたとしても満2年までは成熟しない(横地1995)。

オニヒトデの成体はAcroporaを好んで摂餌する(Chesher 1969, Pearson & Endean 1969*, Nishihira & Yamazato 1974*, De'ath & Moran 1998)。普通の大きさのオニヒトデ(直径約25cm)は一個体で6から12?のサンゴ礁面積(平面に投影された面積)を食害するといわれる(Endean 1974*)。

 

5] 移動

オニヒトデの大量発生が起きて駆除が行われた際にまず疑問視されたのは、オニヒトデの成体はどれほどの距離を移動をするのか、なぜ突然に現れて、どこへともなく去っていくのかということであった。前線を形成して移動するオニヒトデ個体群は、常に同一の個体からなるのか。それらが不明確であるため駆除効果の確認も困難であった。

オニヒトデ個体群を研究する際の難点のひとつは、オニヒトデに標識を付けるのが難しいということである。これまで、各種の札、染料などが試されてきたが、長期の追跡に耐えられる方法はまだみつけられていない(Birkeland and Lncas 1990)。

ハサミで特定の腕の棘を切り取る散髪方式が試みられたが棘が再生するまでの6ヶ月までには識別が可能としている(Ormond & Campbell 1974*、御前 1980)。しかし、オニヒトデは探索時と逃避時とでは移動速度が大きく異なり、逃避するときは高速である。したがって、散髪によるマーキシグをしたあとの行動は、かなり平常と異なる(速い)のではないかという疑問がある。

 

 

 

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