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ii) 分類学

オニヒトデAcanthaster planci (Linnaeus 1758)は棘皮動物門 Echinodermata、ヒトデ綱、有棘目Spinnlosa、オニヒトデ科Acanthasteridae、オニヒトデ属Acanthasterに属する。オニヒトデ属Acanthaster Gervais 1841には、A.planciのほかにA.brevispinus Fisher 1971がある。A.brevispinusはフィリピンとGBRで見つかっており、A.planciと異なり、サンゴ礁には棲まず、水深の大きな砂泥底に棲み雑食性である。A.brevispinusはA.planciの祖先型と考えられている。

A.planciはカリブ海にはいないことと、A.brevispinusとの遺伝的距離から、A.planciはパナマ地峡形成後の第四期更新世に種分化したものと考えられている。また、上記2種のほかにA.ellisii(Gray, 1840)が報告されている。しかし現在、これはA.planciの種内変異であると考えられている(Nishida & Lucas 1988)。

和名のオニヒトデは箕作(1903)が鬼ヒトデと名づけたものを、大島(1936*)が採用した。英名は、Crown-of-thorns starfishで、背面の鋭い棘のために荊の冠ヒトデと呼ばれたようである。

 

iii) 形態学

A.planci(L)は大型で、直径が60cmに達する。腕の数は8から21。反口面(上面)は大型(15〜45mm)の関節をそなえた棘で覆われる。個体によりさまざまな体色を呈し、灰色、オレンジ、紫がかった青などであるが、棘の先端は一般に赤い。

オニヒトデは、他のヒトデ類と大きく異なる形態的特徴があり、それが他のヒトデ類に比べサンゴ礁群集に大きな影響を及ぼさせている(Birkeland & Lucas 1990)。つまり、多数の腕を持つために塊状のサンゴに取りつくことが可能で、体躯が柔軟性に富むために把握力が大きく枝上サンゴに身体を固定できる。また、円盤形をしていることは単位体重あたり大きな胃面積を持つことになり、摂餌の効率がよく成長が早いために捕食者による捕食を回避しやすい。鋭く毒性のある棘もまた捕食者に対して有効であろう。

 

iv) 発生学

オニヒトデは雌雄異体で性比は約1対1、放卵・放精による体外受精によって繁殖する。無性生殖による繁殖は知られていない(Moran 1986)。夏に産卵し、受精後13時間ほどで、嚢のう胚期幼生として孵化し浮遊幼生となる。浮遊幼生時代はビピンナリア期とブラキオラリア期を経ておよそ10日から1ヶ月半で着底・変態する(Henderson & Lucas 1971, Yamaguchi 1973)。

波部ら(1989)は、ことなる水温条件でのオニヒトデ幼生の発生過程を調べ、胚と浮遊幼生の発生最適温度は26−34℃とした。これは、オニヒトデが分布する海域で、オニヒトデが幼生期をすごす夏の水温と適合する。

 

 

 

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