また、十二月には子供の出産があったが、これもいろいろな人のお陰で心配していたよりは問題なくクリアすることが出来、育児をしながら実習を行なうという貴重な体験をし、そういう意味でも思い出深い解剖学実習となった。
いろいろな問題を含みながらも何とか四ヶ月間体調を崩すこともなくやり通すことが出来た。自分の解剖学実習に対する自己評価としては七十点ぐらいであろう。残りの三十点は、この解剖実習で得たものをこれからも維持し、それを実際の臨床の現場で生かすことによって埋めることが出来、そのとき始めてこの実習が自分にとって完壁なものであったと言えるのではないだろうか。
このように、自分にとって解剖学実習とはこれから医師になり臨床医学をやっていく上で、その大きな根底をなす重要な知識構造であると思う。しかし、実習を進めていくうちにこれはあくまでも二次的なことであり、解剖学実習というのは解剖学と言う学問を行なう場であることに気付いた。このことは、解剖学教室のスタッフの方々の一貫した考え、つまりヒトの発生過程、ひいては生物の形態学的進化過程をさかのぼりながら、形態解剖を行なうという姿勢を見ることにより分かり、また自分なりに多少なりともそれを共有することが出来、その学問的な魅力、自分がこれまで知らなかった思想に触れることが出来たことは、非常に新鮮な感動であった。解剖学実習で得られたものは自分の大きな財産であり、実習をやり遂げることが出来たことは、今後の大きな自信になるに違いない。