それはとても難しいことだと思います。その他にも患者さんの顔色、態度、歩き方、それだけでなくレントゲンや心電図の波形などなど情報はたくさんあるのです。これらの情報を集めるためには普段から、いかに自分の周りの人の話を注意深く聞いたりまた観察していることが必要だと思います。
二つ目は知識です。医者であれば多くの知識を持っていなければならないことは当然のことと思います。しかもその知識は単に本を読んで得たのではなく、自らの目で見て体験して得た知識であり、かつ自分で自信を持って正しいと言える知識であるべきだと思います。
三つ目は問題解決能力です。多くの情報を得て、それを自分の知識に照らし合わせ、その問題点を見つけだし、そしてその問題を解決していく能力です。
四つ目は心です。困っている人がいたら何とかしてあげたいと思う心です。それは"やさしさ"とか"おもいやり"とも言えると思います。
以上が以前から考えていたことも含めて、解剖実習づけのこの数ヶ月にいろいろと考えて悩んで、今現在の自分の思うところです。
実習が始まって最初に驚いたことは、御遺体を見ても何が何だかさっぱり分からなかったことです。前期の半年間に相当勉強して準備して臨んだ実習だったはずなのに、それらの知識は全く通用せず、自分の見ているものが神経なのか血管なのか、はたまた結合組織なのか全く見分けがつかなかったのです。アトラスを見てもそれは所詮写真であり、実際目の前にある本物とは全く違うものでした。