解剖で学ばせていただいたことは本当にたくさんありました。しんどいと思うこともありましたが、今ではもう解剖が終わりなのだという達成感よりも、もっと解剖させて欲しい、もっと学ばせて欲しいという気持ちで一杯です。しかしそれは叶わぬ願いであります。解剖で学んだことを一つでも多く将来、実際の医療現場で患者を救うのに役立てることができれば、献体してくださった方に少しでも応えることができるのではないかと思います。
最後にいま一度献体して下さった方、そしてこの御遺族の方に心から感謝申し上げます。
解剖学実習を終えて
大石豊
何よりもまず最初に私達学生らのために御献体下さいました皆様に心から感謝しお礼申し上げたいと思います。本当にどうもありがとうございました。皆様の生前の尊い篤志なしには成り立つことのない解剖学実習を、春からの約三ヶ月間にわたって三年生全員、大過なく終わらせることができたこと、一同たいへん嬉しく思っております。
この実習が六年間という長い医学部の教育過程において、限りなくユニークなハイライトの一つであるばかりでなく、終生一医学徒として仕え、お付き合いしてゆくことになる数多の患者さんの一人と初めて出会い接するという場であることを鑑みるとき、この貴重な機会を前にして、私達はそれを与えられたことに対する感謝の気持ち、御遺体に対する畏敬の念、そして人体の巧みな構造や営みに対する飽くなき探究心を、常に忘れることない共有の理念として、今一度心に留め、加えて医の道を歩き始めることを決意した各々なりの内なる想いを胸に、周到な予習の下、真摯な態度でこれに臨まねばならないことはいうまでもありません。
