大学に入ってからは一度もした試しがなかった予習・復習を実習前には必ず行うなど(本来なら当然であるはずですが……)し始めました。私の態度にこのような変化が現れたのは他ならぬ、私達医師を志す者の為に自らの一生涯をその心と供に歩んできた大切な体を献体して下さった人々の遺体に接する以上、私もそういった人々の期待に誠意をもって答える必要を感じた為です。
解剖実習を通して私達は新しい知識の数々も学びとりました。教科書で学んできた知識はあくまでも紙面の上のものでしたが、実際に自分の目で確かめ、手で触れることによって、それらを鮮明なものにすることができました。しかし、解剖実習によって私が得た最大のものはこれらの知識ではなく、(もちろん大切な事は十分に承知しています)医師になるということの再認識であったと思います。それは先程の学習姿勢の変化にもつながっているものですが、献体して下さった方々の遺体と向き合うことによって自分達への人々の期待の大きさ、責任の重さをを痛感することができました。近年はバーチャルリアリティなどの技術が発達し、実際に遺体と向き合わなくてもそれ以上に細かく解剖学等を学ぶことができるなどと言われていますが、解剖実習のように本当に自ら遺体に向き合うということは医師になる上で必要不可欠なステップであるということを実感しました。