自分には持てない程の勇気を持って、献体なさって下さった方々のためにも、私は勉強しなければならなかったのです。自分たちの解剖している御遺体の一人一人が、我々と同じ「人間」なのです。人間にはそれぞれ個性があります。我々の解剖していた御遺体には、いくつもの破格がありました。似てはいるけれど、どの御遺体も微妙に違うのです。そう考えると、自分の握っているピンセットに自然と力が入っていたのを覚えています。
我々の御遺体の死因は、不明となっていました。私は御遺体の肝臓がひどく硬くなっているのを見て、耐え難い程痛々しい気持ちになりました。何とかこの硬くなった肝臓を元にもどしてあげたいといった気持ちでした。
今回の実習では、何かとうまくいかないことが多く、御遺体から学び得ることの全てを学べたとは言えません。しかし今回学んだことは、医学的知識だけではなかったと思います。生命の神秘さ、人間の尊さなどです。
友達と協力して一つのことを成しとげることの大切さもそのうちの一つであったかもしれません。それを我々学生に身をもって教えて下さった方々に、もう一度感謝の気持ちを申しあげたいと思います。
ご遺体に感謝
上原雅恵
四月三十日解剖学実習の初日、以前より先輩方から実習がどれ程たいへんなものであるか聞かされていたため、果して自分はこの実習を最後までこなせるのか、グループの人と協力してやれるかといった不安で朝から胸が一杯でした。