不可逆な時間の流れから、のがれる事のできない人類にとって、生と死はどう区別されるのか、又、どの程度違うというのか。その問いに対する答えが自分なりに持てた気がします。確かに生物学的には生と死は区別されるでしょう。でも死後に人格が消えてしまう、と言えるのでしょうか。僕は否、と言いたい。確かに目の前の御遺体は動きません。しかし、僕らが医学を修め社会に役立ってほしい、と御遺体が語りかけてくるような気がしました。
僕ら医学生の為に御自身の体を献体して下さった方々には、敬意の念を抱かずにはいられません。翻って自分自身を顧みれば、反省することしきりです。本当に自分は御遺体から学びつくしたのか。残念ながら「はい。」と断言できる自信はありません。覚えることが苦手な僕にとって、二ヶ月程度で人体の構造の詳細な部分まで覚えることはとても大変な事で、今後も絶えず復習していかなくてはと思っています。自らの体を使わせていただいた方々のためにも、今後一生懸命勉強して立派な医師になりたいと思います。
解剖学実習を終えて
三枝里江
初めて解剖実習室に入った瞬間、初めてメスを入れた瞬間、そして実習を全て終え柩のふたを閉めた瞬間の気持ちを、きっと私は一生忘れることはないでしょう。
