5. インフラ整備について
1)入札の環境
・シンガポールは工事は、一般競争入札で実施されるので、受注は至難である。70億円程度の建築工事では、40社もがテンダーに参加する。安く安く入れて、さらに10%程度切って、入札しても一位はその15%マイナスなんてことが多い。
・入札時に、「予想されるリスクに関しては、その値段を入れるように」となっているので、その分のリスクは請負側で負担することになる。この分のお金を計上しているとテンダーに勝てなくなる。その点、請負者が損する仕組みだが、設計者の要求した変更などではその分の増加を確実に認めてくれる。数量はBQ(Bill of Quantity 数量見積書)で定められている。これに基づいて、ランプサムの契約を行う。
2)パシャ・パンジャン(フェーズ1)のターミナル建設
・パシャ・パンジャンの工事費はPSA(当時)の過去の蓄えで実施したと聞いている。
・パシャ・パンジャンのターミナルはケーソン敷設、キークレーン用デッキと埋立工事を五洋建設が担当した。ヤードのオーバーヘッドクレーンと舗装は三井造船が地元のケッペルというエンジニアリング会社と提携し受注し、キークレーンはすべて三菱重工製である。また、ヤード奥のトランステナーはNKKが納入した(因みに、フェーズ2は韓国の現代が埋立工事を受注した)
・パシャ・パンジャンのフェーズ1の工事について、180haの埋立を行い、岸壁延長3000mで、合計108函のケーソンを設置した、埋立用の砂は、従来通りインドネシアからの買い付けである。
・日本の海洋工事の違いの比較をすると、
1]海が穏やかで年中工事ができる。
2]シルト対策もほとんど必要ない。
3]浚渫工事などに、シートレーラーを活用できる。日本では、自走できると船員法の規定とか、使用条件がうるさくなるので、自走式の浚渫船は普及しない。
4]日本と材料、労務、機械外注費を比較すると材料費にはそんなに差はないと感じるが、労務費は確かに安い。(熟練工で3000Sドル/月、外国の雑務工は想定される残業分を含めても月1000Sドル=7万5千円程度で済む。)また、施工機械類はその都度、世界から最新技術を導入してやっている、因みに今回のパシャ・パンジャンの工事も、ケーソンのスリップフォームではスウェーデンの技術を、ケーソン移動では米国のウォータージェット法を適用した。
・埋立施工中には、シルト分が隣国領海に流れるという環境問題も生じる、近年、珊瑚とかの環境問題とかはうるさくなってきた。
3)施工費用
ケーソン1函あたり、約90万S$程度、埋立は発注者単価で、5S$/立米ぐらいである。パシャ・パンジャンは全体で2千万立米強あった。