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海外調査その1

・シンガポール調査中間報告書

 

調査員:(財)港湾空間高度化センター 主任研究員 小田康弘

調査日程:

1999年4月26日(月) 

五洋建設シンガポール営業所訪問

K-Line (Singapore)訪問

4月27日(火) 

PSA Corp.訪問

 

1. 港湾の整備と運営

 

1)PSAの民営化

 

PSA (The Port of Singapore Authority)はもともと、国の当時の情報通信省(The Ministry of Communication and Information)管轄の外局であり、Statutory Bodyといって、制度制定などの行政権をもちながら、港湾運営を独立採算のような形で実施した港湾局であった。しかし、シンガポールにおいても国の業務を減らす世界的な潮流に乗る形で、テレコムなど通信・郵便事業もこの数年で順次民営化が進められた。港湾局の民営化の構想は94年より具体化した。まずPSAの法制度部分が公的な部分として残されて、96年2月にMPA (Maritime and Port of Singapore Authority)が設立された。

PSAは97年10月1日付けでコーポラタイズ(民営化)された。この際にMPAはPSAに3つのライセンス(免許)を9月30日付けで与えた。それは、

1]コンテナなどの物流ターミナルの運営権

2]旅客ターミナルの運営権

3]パイロットとタグのサービス提供権

である、港湾の利益を国民で共有する目的から株式公開が予定されている。この2、3年で実施されるかもしれないが、株式がもっと高値になるのを待って売り出す予定である。この株式公開で民営化が完了する。PSAコーポレーションはすでに、ポートオーソリティではなく、ターミナルオペレーターであるので、PSAコーポレーションの正式名称をPort of Shingapore Authohty Corporationとするのは誤りとなる。MPAがシンガポール港のポートオーソリティである。PSAは民営化されたとはいえ、現状政府が100%出資の状態であるので、依然として半官半民の状態であるといえる。

民営化の目的は、大きく二つあり、まずはじめは株式公開で納税者である国民人一人がPSAの株所有者となり、このPSAの富を広く国民で共有することである。二つ目には、政府直営の制度管理的な組織からより商業的マインドで、顧客の要望に柔軟に素早く対応するためである。

PSAは世界の主要港と比較してもともと効率的であったと判断されるが、民営化の真相は、PSAの活動内容が、本来のPSA設置法における定款の業務(主にターミナル運営か)から様々な方向へ拡大していったことにある。今は、海外港湾投資、不動産業、倉庫業まで行っている。PSA設立当初の法律では、海外投資を行うことまでは業務として述べられていない。世界の他の港湾に投資する目的は、グローバル企業となり収益をあげることと、PSA独自の情報技術を含めて、自社の港湾管理技術を広く世界で活用させていきたいからである。海外投資は、民営化前にスタートしているが、これは1994年の時点ですでに、PSA民営化の方針が確定していたこともあり、やや見切り発車的になっている。

 

2)PSAとMPAの役割分担

 

前述のようにMPAはPSAの公的な行政部分(regulatory department)が分離して、さらにもともとあった政府機関のthe Maritime Departmentとthe National Maritime Boardを統合して、現在の通信省(the Ministry of Communications)の管轄下として、1996年2月に設立された。

 

 

 

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