これによって、北西欧州は、徐々にそして最終的には、海上・陸上のさまざまな輸送会社による投資でインフラストラクチャーと輸送が抱括的に完備されるようになります。主要海運会社は、しばしば、インフラストラクチャーやトラック、鉄道、はしけによる内陸輸送接続網建設に参画します。例えば、ヨーロピアン・レール・シャトル(オランダの鉄道をP&O、ネドロイド、シーランド、マースクの海上サービスとつなぐ会社)や、ドイツとオランダの鉄道が欧州での貨物輸送で提携したNDX社などはその例です。同社は、米国の鉄道会社が所有する海運会社シーランドと提携しました(Baudouin、Collin、1998年)。厳しい競争の中で、港湾自体も後背地輸送に参加しています。このようにしてロッテルダムは複合輸送(内陸水路、鉄道、道路との積み換え)だけでなく、東欧の輸送接点、イタリアとユーゴスラビアの間に位置するトリエステ港にも参画(投資)しています。同様の投資は、最近、アントワープやハンブルクでも顕著です。海上輸送貨物をめぐる港の競争は、後背地の輸送をめぐる競争へと拡大しました。
ハンブルク―ルアーブル圏の主要港の、圏内での相対的地位を強化するための第二の戦略は、中小の立地のいい港に参加介入(財政的に、および専門知識など他の資源の面で)し、これらの港をサテライトポートとして利用することによって、荷役・保管に必要なインフラストラクチャーの過大な負担を軽減することです。オランダ南西部のフラッシングはその良い例で、ロッテルダムとアントワプ両港がこうしたサテライト関係をフラッシングと始めています。
3. 港湾と港湾管理運営:北西欧州の現動向への適応
西欧ではさまざまな種類の港湾管理運営が行われているのが特徴です。これは欧州の民族国家における多様な統治体制・政治制度と関係しています。非常に中央集権化された国もあれば、連邦制の国もあり、都市や地域の自治が強い国もあります。このため、欧州には世界中で見られるようなさまざまな港湾管理運営システムがあり、一つの国中でさえ、米国のニューヨーク/ニュージャージー港、シアトル港、ロサンゼルス港のような、非常に異なる形態の港湾管理運営が存在します。これらすべての港は日本の港(例えば神戸)、香港、シンガポール港の形態とも異なります(Stevens、1997年)。
一般的に、西欧では過去から発展してきたシステムとして、3つの主要システムを挙げることができます。
a. 政府による港湾の中央集権的統治(主に運輸・建設省による):フランス、イタリア、スペイン(ラテン・システム)。
b. 自治性の高い半公共英国式トラスト方式 : 英国(アングロサクソン・システム)。
c. 市営(地方自治)の港:オランダ、ドイツ、ベルギー、バルト海諸国。これは北西欧州の港湾都市、いわゆるハンザ同盟都市です。アムステルダム、ズボーレ(オランダ)、アントウェルペン、ブルッヘ(ベルギー)、リューベック、ビスマール、ロストク(ドイツ)、グダニスク、エルブロング(ポーランド)、リガ=シグルダ(バルト海諸国)、ストックホルム、コペンハーゲン(スカンジナビア諸国)、リガ、ロシア(サンクトペテルブルク、アルカンゲル)の歴史的ネットワーク、いわゆるハンザ同盟に明確に現われています。