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そういう中で、今日のアメリカ、ヨーロッパを通じて、地主型港湾、管理者と申しますか、ランドロードとしてのポートオーソリティが、どういう主導権を取っていけるかということが、今、世界の主要港湾の非常に大きな課題になっています。もちろん、決め手は極めて限られているというか、手探りな状態であるといったほうが正しいと思いますが、そういう中にあって、幾つか出ている動きと申しますのは、これまでのような、インターポートのコンペティションに明け暮れているだけで、船会社が、アライアンスをどんどん作っていき、先ほどの第二のプレイヤーとしてターミナルを牛耳っていく。あるいは資本力に任せて、第三のプレイヤーが伸びていくということに、本当に拮抗できるのかどうかという、危機意識が非常に強くなってきたからだと思いますが、競争だけではなくて、そこに何らかの共同作戦を張っていこうという動きが、現実に出てきています。もちろん、皆さんもよくご存じのように、協調と競争というのは、言うべくして非常に難しいことであります。特にビジネスというか、港湾の経営にあっては、なかなか容易でないわけですが、先ほどブラウニング先生のプレゼンテーションにもありました、例えばロングビーチとロサンゼルスのアラメダ・コリダーというような、2つの港のこれからの生命線とでもなるような、内陸へ向けての太いインフラストラクチャー整備は、おそらくそれのいい例ではないかと思います。

翻って日本のことを考えてみますと、例えば東京湾一つとりましても、多くの港湾が、コンテナポートの、より強い立場を目指して、日夜頑張っているわけですが、そういった競争を片一方に持ちながら、個別の対応だけで乗り越えられない領域の強化策に取り組み始めないと、単純な熱意だけでは、この国際的な港湾ネットワークの中で、日本の中枢港湾の地歩を確保していくことは、なかなか難しいのではないかと思います。

もう2つですが、これはブラウニング先生のお土産としてということにもなりますが、日本がアメリカなどと違って、あるいはヨーロッパと違って、少し幸運なところは、これからも世界の経済成長センターであり続けるでありましょう、このアジア地域の一隅に、日本自身が位置しているということであります。したがいまして、今日、主として話題になった、ハブポートがどこになるかということも、もちろん、我々港湾関係者の大きな関心事でありますが、日本とアジアの主要国との間の距離は、1,000?q、2,000?qという非常に短い距離にあります。もっと言えば、これからますます国際貿易で量的に増えてきますのは、イントラエイシャーのトレードがもっと増えてくるわけでありまして、その意味では、日本の港湾が、非常に数少ない拠点をより強化していくということと並んで、もう少し小型のコンテナ船による輸送基地、あるいは日本に対する入り口を、より分散した形で持っていくことが必要とされている。そういう特徴を、アメリカやヨーロッパと比べたときに、日本は明らかに持っていると思われます。

 

 

 

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