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港湾法は港湾管理者が一般公衆が公共埠頭を使用する妨げとなるような行為をとることを禁止している。しかしながら、民間事業者の専用利用となっている事例も存在する。そのようなケースはそれが施設機能を増大させ、その施設の本来の目的を阻害しない範囲である場合に限られている。何か条項を追加しない限りは現状の地方自治法ではリース契約を行うことが出来ない。119) 一般的に民間事業者は管理者から使用許可を受けて施設利用している。120)

 

上記の疑問を与えられた文脈で検討する際に「公共の利益」は何を意味するか考えることが大切である。管理が公共サイドから民間サイドヘ移るとき、この公益性が無視されるケースがしばしばある。米国では国の憲法でフリーマーケットの制度が明言されており、多くの州ではその制度が機能するように法律にしているところが多い。例えばワシントン州では今世紀のはじめにポートオーソリティのしくみを構築している。それは港湾とは公益物であり、公共の利益を促進するものであるという理解をべ一スにしている。港湾はその地域の経済成長の原動力であると考えられている。港湾を管理する法律はその地域の貿易や商業のために欠かせないように思われている。このような法律の枠組みにおいては、ほとんどの米国の港湾当局は民間事業者に対して地主として機能する権限をもっている。米国の港湾当局は課税権をもつところとそうでないところがある。ワシントン州法では港湾は税収の補助を受けられることが記載されている。ワシントン州の港湾はその地域の郡(county)政府が徴収した固定資産税(財産税)から補助を受ける。しかし、それらの税収は港湾の開発運営全費用のごく一部でしかない。税収は土地の購入には使用してよいが施設の建設には使えない。

ワシントン州では他の州と同様に公的税収を民間企業のために使うことは禁止されている。しかしながら、港湾当局は税収で開発してきた土地を借受者から適切なリース料をもらうことで民間企業に対して貸付ができる。土地のリースにおいて借受者は固定資産税が免除されるというメリットがある。港湾当局はこのリース契約を港湾運送事業者や海上輸送事業者と協議する。港湾当局は通常次のように協議を始める。「我々はあなたにぴったりの土地を持っている。我々はバース、係留施設、ガントリークレーン、そしてヤードを建設しましょう。所有権は我々にあるが、お互いの利益になるという前提で、この施設をあなたに長期間リースしましょう。」一端協議が終了すれば、両者は最長で30年間のリース契約を締結することになる。借受者は施設整備費の一部を負担することがある。港湾当局はこのリース代収入で建設費用を回収することになる。民間事業者のリース代の負担を軽減するために収入歩合制がしばしば適用される。このタイプの地主・借受者の関係はどちらかというとパートナーシップに近い面があり、同意に至るまでに多くの協定事項が取り交わされる。

 

米国ではターミナルを建設してそれをリースのために入札させることは通常でない。港湾当局は貨物量増大に懸命になって活動する借受者を誘致したいと考えている。彼らは成功してくれる借受者をパートナーとして選定したい。それは船社でもターミナルオペレータでもよい。米国の港湾当局は資金の一部を公債の発行でまかなう。彼らはたぶん港湾システムが不能状態となる場合に最終手段として税収を活用することはあっても、それ以外で税金を使用することはない。

 

 

 

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