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2.2.4. 民営化

 

公共団体によって提供されるサービスは質が低く、それを改善するには民営化であると考えている人が多い。しかし、民営化は生産性向上や品質向上と同義語ではない。よいサービスとは組織の競争能力の方に関係するものであるし、組織がいかに商業的企業として活動する能力があるかである。民間セクターの組織は平均としては公的セクターの組織より効率性が高い。民営化にはさまざまな形や形式がある。土地や資産の公的セクターから民間セクターヘの所有権移転にとどまっていない。公共港を民営化していく際の度合は、その業務の性質や個々の特殊事情によって異なった判断になってくる。一般的には民営化とは所有権の移転、既存の会社の管理権移転、営業やサービスの移転が公的セクターから民間セクターヘとなされることをいう。民営化は、公的セクターが公共港湾の既存の利権を完全に民間組織に移譲または売却したときに完成する。この場合すべての土地と財産が完全に民間の所有物となること、さらに民間セクターの組織がその会社を完全に管理運営することを意味する。116)

 

米国の場合、部分的民営化の形はほとんどの港湾でとられてきた方法である。これは所有権の一部を移譲する部分的な移譲である。コンテナターミナルを第三セクターや民間セクターへ貸し付けることは部分的民営化のよくある形である。固定資産の所有権に変化はなく、それは港湾当局の財産としてとどまる。117) これらのことは公共サイドと民間サイドの交渉決定事項と同意事項によって定められる。

 

3. 研究の成果

 

これまで見てきたコンテナターミナルにおける制度上のしくみは今後の研究において重要な情報である。地方のレベルで変革するための最も重要と考えられる分野は、ターミナルのインフラと上物の整備資金の調達を検討すること、敗者のいない形で時間をかけてコンテナターミナルのリース契約を行うこと、新しい情報技術の採用で使いやすいターミナルをめざすこと、内陸のアクセス状況と複合一貫用施設の改善すること、である。それぞれの港湾地域はそれ自体法律上は公共財産である。制度上のしくみが新しくなる際は、それは地域杜会と国全体の国民経済的な必要性を反映させるものでなくてはならない。

 

今回の研究でのそもそもの検討項目は、北米西岸の民間事業者が公共港湾当局によって建設所有されていたコンテナターミナル施設(バース、ヤード、建物や設備)を長期間専用リースすることが可能であるか。もし可能ならば、そのときにどのような考え方をとり、リース条件をどのように考慮すべきかということであった。118) 日本では同様な施設は港湾管理者(地方自治体)によって所有され、国の補助金と自治体の調達した資金で建設している。現状、港湾管理者によって建設されたものを公共利用することは大前提となっている。言い換えれば、港湾管理者は専用利用となるバースやヤードを作れない。そのような施設は港湾管理者の了解のもと民間側が建設する必要がある。港湾管理者は条例に示された料金を施設を利用する民間事業者に対して徴収している。

 

 

 

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