しかし、そのような分析は予算請求の段階で必要である。政府によって実績のある数値に基づく(分析のための)計算式が作成されている。例えば、ゲートウェイ港の建設は神戸港への陸送費やフィーダー船費用を削減することができ、また次のようなメリットもあるとしている。
1) 安い陸送費
2) 陸送における貨物通過時間の節約
3) 海外の港湾を利用する安いトランシップ料金
4) 安い外航運賃 66)
米国では費用便益分析は標準で実施する。例えばシアトル港ではターミナル開発においては必ず費用便益分析を行う。類型的なものとして、環境影響評価書(EIS: Environmental Impact Statement)においては公式手順が存在し、そこではターミナル建設によるすべての悪影響や改善効果を考慮することが必要である。このEISプロセスとは別個に、シアトル港湾局はこのターミナル開発で創出される仕事や地域経済の発展へのプラスとなる経済効果についても予測する。それらの調査結果は、財務上の収益と勘案して開発すべきか取りやめるべきかの判断材料となる。67)
政府による港湾インフラ・設備・運営の革新の推進
中央政府は日本でも米国でも港湾インフラ・設備・運営に対しての改革を推進している。米国では議員立法で21世紀に向けて物流効率化法(Transportation Efficiency Act for the 21st Century 68))が制定され、情報技術を活用して物流を改善するさまざまな先導的な試みに対して資金提供がなされている。さらに海事局(MARAD)では、荷役作業やより効率的なコンテナ貨物の荷役システムについての調査を実施し、研究会を開催している。69) 日本では運輸省が港湾局の年報においてその長期政策を記載している。それにはコンテナターミナルの設計において情報技術を含む港湾技術の開発政策が織り込まれている。70)
複合一貫輸送
港湾とロジスティクスの運営は、専門的な市場分野に特化する形でだんだんと限られた数の国際オペレータによってなされる。また数社の大手船社は彼らの海上輸送網を内陸拠点まで拡張し、一貫輸送サービスを提供するところがでてきた。港湾はかつての単なる海と陸の物理的な境界といったものからは離れて、徐々にロジスティクスや物流拠点を備えた商業や産業の中心地へと変貌してきている。港湾はもう国際的なサプライチェーンのネットワークの中で複合一貫輸送の結節点としてみなされるようになった。71) 巨大化した複合一貫のシステム、鉄道の乗り込み、そして船社の大合併化により、港が今以上に選別されて、その港では世界貿易のシェアが増加する状況を生じている。1980年には世界の輸送料の31%を上位の10港で扱っていたが、今や40%近いシェアを確保している。同時にトランシップの扱いが増えたことでハブ港の成長の手助けとなってきた。コンテナのトランシップ貨物は現時点でコンテナ海上輸送全体の20%を占めると考えられており、将来的にもっと増える。海運業界における海上輸送と会社組織の構造改革の自由化によって、国際海上輸送料金は過去10年間に渡り毎年相当額低下していき、それが40%以上減というのもしばしばであった。72)