米国港湾が、土地そのものをリースして借受者の整備に任せることをしない理由としては幾つかの理由がある。港湾当局の事情としては、彼らの土地の所有権は確保したいことが主な理由である。例えばカリフォルニア州では、港湾局による干潟部分の土地の売買は州法であらかじめ禁止されている。借受者側から言えば、それは多くの場合船社であるが、もし底地を借りてそこに彼らの資金でターミナル施設を建設すれば、そのターミナルは課税対象物になってしまうということである。リース契約では、ターミナルは港湾局の財産であり、(船社である)借受者はより低額の税金を固定資産税の代わりに納めるだけでよい。たいていの場合、その税額は施設の評価額に対してではなく、リース代に基づいて設定される。二つ目の理由としては、船社はあまり現金や借入先を持っていないし、絶対にそうする必要がない場合は、ターミナル建設以外に資金活用した方がよいと考えているからである。もし建設費用を出すとなると、課税債券(taxable bond)の利息で借金することになったり、社債を発行することが必要になる。抵当権付きの債権を発行することも、実際に土地を所有する訳ではないので困難であるし、その負債を賃借対照表に記載しなくていけなくなる。23)
米国におけるコンテナターミナルの建設運営方式は、公的サイド(港湾当局)が施設の財源の確保と建設を行っている。たいていの場合それは、独立したターミナルオペレータや船社の子会社などの民間のターミナルオペレータヘ貸付られる。そして最終的にはその民間会社がターミナルの運営を行っている。24) その交渉は複雑であり、たいていの場合コンテナターミナルのリース期間は30年契約で、定期的な見直し条項が含まれている。25)
ターミナル建設の典型的なパターンは、港湾当局がターミナルを借り受けるオペレータを交えて建設計画を作成する。港湾当局は建設費用を確保するために、起債を行う。次に港湾局は民間の建設会社に対して競争入札を実施し、たいていは最低価格方式である。ターミナルの建設契約は一民間の建設会社に対するものであり、ターミナルのリース契約そのものとは一切関係がない。26) 米国には民間側のターミナル使用者が建設に関与していた事例がいくつかある。最近の例ではシアトル港のターミナル18の建設がある。そのターミナルはいわゆる「プロジェクト・ファイナンシング」の手法により資金確保が実施された。この資金確保計画では、プロジェクト自身が港湾のある自治体の外郭団体が発行する債券に対する担保として機能した。そして建設工事はターミナルの民間側の借受者、この場合Stevedoring Services of America によって管理されている。27)
税収で建設された公共岸壁や土地の民間セクターヘの貸付
日本では船社への専用貸しが法律で実施されているが、この公社方式には補助金は存在しない。28) 公共方式では、港湾管理者は一般公衆が公共埠頭や関連公共施設を使用することを妨げてはいけないし、特定の一利用者への専用貸しは禁止されている。一般的な規則では、専用貸しは禁止であるが、いくつかの例外も存在する。29)