新方式の利点は従来の公社方式に比較して、大水深の岸壁の貸付料を安くできるということである。それはインフラ部分が公的サイドで整備されるからである。問題点は整備主体が2つ存在することであり、港湾管理者はバース部分を管理し、ヤード部分と施設類は埠頭公社に管理されることである。20)
北米におけるコンテナターミナル建設運営の官民の責任分担
北米においてはコンテナターミナルの開発運営制度について二つの基本型がある。施設サービス提供型(the Facility Service Provider model)と地主型(the Landlord model)である。施設サービス型港湾は一般の港湾と見なすことができる。公的サイドが港湾関連のサービスを全体として供給し、港湾荷役まで行う。これは米国西岸におけるポートランド港がその類型の代表である。日本のコンテナターミナルにおける新方式に似ている。
地主型
地主型のターミナルはロサンジェルス港(6箇所)、タコマ港(6箇所)、ロングビーチ港(8箇所)、オークランド港(8箇所)、シアトル港(6箇所)、そしてカナダのシアトル港(3箇所)に存在し、北米西岸には全部で48箇所の地主型のターミナルがある。
世界銀行のデータによると世界の100ある主要港の内88港は「地主型港湾」であるという。そしてこれは、日本が港湾の規制緩和を検討する中で、政府側の港湾整備方式の一案でもある。地主型港湾には定義に幾らかのバリエーションがある。一つには、港湾当局は岸壁部分(と岸壁深度を含めて)のみを提供し、底地を借受者に貸付、借受者がその後の整備を行うものである。これは最も単純であるが、ふつうに見られるタイプではない。米国では「地主型」という言葉はより広い意味でとらえており、一般には港湾当局が岸壁とターミナルを所有し、それをターミナルを運営する他者(船社、港運会杜など)に貸し付けることを示す。
米国とカナダではすべての主要港は地主型港湾であり、コンテナターミナルのすべてを所有しそれを運営のための貸し出すスタイルである。しかしながら、前者の例は米国やカナダでは多くなく、港湾当局が底地をターミナル開発の提案に基づいて民間側に貸し付けて、その借受者の費用で整備するといった例は少ない。米国における少ない事例の一つとしては、1980年に行ったオークランド港のリース方式がある。その方式では、ある船社がターミナル整備費用の大半を負担して、港湾当局の負担の方が少ない。そして、港湾当局はターミナル整備後に、その船社に対して通常よりは十分に低い料金で長期リースを行っている。このタイプの方式は建設費用の先行的な財源確保としての要素を反映して交渉されるものであり、将来の貸付料を低減させるための一括前払いのようなものである。21)
米国の多くの地主型港湾はコンテナターミナル計画に対して、第二のタイプの整備運営方式をとっている。「地主型港湾」の定義付けを通して、パートナーシップやジョイント方式を行う傾向がある。ロサンジェルス港にあるAPLの300番コンテナターミナルがそのよい例である。港湾当局はポートランドにAPLの仕様でターミナル整備を行うことについてAPLと契約を交した。ターミナル竣工後はAPLに長期に渡ってリースされる。交渉内容や契約事項の取り決めで、APLにはクレーンや他の荷役設備の購入と所有が要請された。その他のほぼ同一の方式で整備された港湾としては、タコマ港のシーランドターミナルやロサンジェルス港やロングビーチ港に新設されるターミナルがすべてこの方式である。22)