1999年 WAVE共同研究
日米コンテナ港における管理(整備・管理・運営)方法の比較研究
著者:ジェス ブラウニング博士
1. はじめに
1999年の共同研究は、WAVEとシアトルにあるワシントン大学の国際貿易・輸送・物流学科とによって実施した。12月6日から22日の間に東京、横浜、名古屋、神戸、下関それに北九州でヒアリング調査を行った。わたくし(この報告書の著者)はWAVEの全員にはもちろんのこと、訪問先のターミナル、港湾管理者や省庁における案内者やヒアリング応対者に対して、心より感謝申し上げたい。それらの人々と過ごした時間、彼らの労苦があったからこそ、こうしてこの報告書を取りまとめることができた。
この変化の激しい大交流時代において、日本政府は日本の港湾のターミナル運営をより効率的に、利用者の使いやすい、さらに東アジアの他の港湾に対してより競争力をもてるようにすることに、政治面からも経済面からもその対策を迫られている。1998年日本の行政改革委員会における規制緩和小委員会は、経済再興の基礎条件として効率的な物流システムの構築が重要であるとし、また日本の港湾における利用者の要望に応えるために経済財的な効率性の追求が重要であると強調している。(海上交通審議会に)港湾運送小委員会が設置され、委員会は日本の港湾運送産業を競争原理によって効率性を高めることで、規制緩和、近代化を行い活性化させることを推奨した答申を行った。1) 運輸大臣の諮問機関はこの規制緩和を段階的に行うこととしており、まずは東京港で行い、順次横浜港、名古屋港、大阪港、神戸港とその他4カ所の主要港で適用するようにと推奨した。これにより、港運産業は競争社会となり、シンガポール港や香港などの他のアジア港湾に対してコンテナ物流で後塵を拝してきた日本の港湾の地位低下を食い止める狙いがある。運輸省高官によるとざっと1,000の事業者の内、500近くの事業者が、日本全体のコンテナ貨物の95%をカバーする9港で港湾運送事業を行っている。2) これにともない運輸省は輸入促進のための外貿コンテナ埠頭の整備や内貿ターミナルの整備を行ってきている。これには、大水深コンテナターミナルの建設も含まれるが、これは国際航路網の拠点として、また物流コスト削減の戦略的な場所として欠かせないものである。3)
世界は多くの国でよりオープンな貿易制度へと動いているし、マックグロウヒル DRIによる経済予測では、国際貿易の総額はこの15から20年で二倍になりすべての国により多くの機会を与えるものとしている。この全世界的に拡張する新時代には、新たな情報技術が商品や材料を起点から目的地へ輸送するのに大きな影響力をもつようになっている。ジャストインタイムの配送や今では電子商取引が求められてきて、ロジスティクスやサプライチェーンマネジメントが非常に重要になっている。多くのコンテナ港が抱えている課題は妥当な費用で取扱高を伸ばすということである。これはサプライチェーン(流通網)における結節点つまり接続機能(link)を改善することで見直すことが求められる。新しい技術であるGPS、ITS、インターネットやworld・wide・webは情報の流れを改善する道具である。日本や米国の港湾はもっとその道具の採用比率に着目すべきである。制度上のしくみに影響するので、この変革は多くのものにとってたやすいものではない。