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米国港湾は通常、土地そのものをリースして借受者の整備に任せることをしない。港湾当局の事情としては、彼らの土地の所有権を確保し財物を管理したい。借受者側から言えば、それは多くの場合船社であるが、もし底地を借りてそこに彼らの資金でターミナル施設を建設すれば、そのターミナルは課税対象物になってしまうということである。リース契約では、ターミナルは港湾局の財産であり、(船社である)借受者はより低額の税金を固定資産税の代わりに納めるだけでよい。たいていの場合その税額は施設の評価額に対してではなく、リース代に基づいて設定される。二つ目の理由としては船社はあまり現金や借入先を持っていないし、絶対にそうする必要がない場合は、ターミナル建設以外の目的で資金活用した方がよいと考えているからである。もし建設費用を出すとなると、課税債券(taxable bond)の利息で借金することになったり、社債を発行することが必要になる。抵当権付きの債権を発行することも、実際に土地を所有する訳ではないので困難であるし、その負債を賃借対照表に記載しなくてはいけなくなる。4)

 

米国におけるコンテナターミナルの建設運営方式は、通常公的サイド(港湾当局)が施設の財源確保と建設を行ってきた。たいていの場合それは、独立したターミナルオペレータや船社の子会社などの民間のターミナルオペレータヘ貸付られる。その交渉は複雑であり、たいていの場合コンテナターミナルのリース期間は30年契約で、定期的な見直し条項が含まれている。5) 米国では、港湾収入の大半は営業とリース代収入で確保している。港湾運営はすべてこの営業収入でまかなわれている。一般的に米国の公共港湾はたいていの場合、公債の発行などで資金調達が行え、それでもってターミナル拡張のための建設や施設整備をおこなうことができる。6) 米国と日本の港湾当局の大きな違いはそれらの協議の方法からきているように思える。米国では港湾の建設は協議が終了し協定が締結されないと着工しない。他方で日本の港湾においては港湾局と利用者間の協議が完全に終了する前に着工することがある。

 

コンテナターミナルを第三セクターや民間セクターヘ貸し付けることは部分的民営化のよくある形である。固定資産の所有権に変化はなく、それは港湾当局の財産としてとどまる。7) 民営化にはさまざまな形や形式がある。土地や資産の公的セクターから民間セクターヘの所有権移転にとどまっていない。一般的には民営化とは所有権の移転、既存の会社の管理権移転、営業やサービスの移転が公的セクターから民間セクターへとなされることをいう。民営化は、公的セクターが公共港湾の既存の利権を完全に民間組織に移譲または売却したときに完成する。この場合すべての土地と財産が完全に民間の所有物となること、さらに民間セクターの組織がその会社を完全に管理運営することを意味する。8)

米国の場合部分的民営化の形がほとんどの港湾でとられてきた方法である。これは所有権の一部を移譲する部分的な移譲である。これらのことは公共サイドと民間サイドの交渉決定事項と同意事項によって定められる。

 

日本港湾の競争的地位の向上

 

日本の港湾の開発と改善に関する港湾審議会の答申は、より重要な港への重点的投資の必要性を強調している。

 

 

 

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