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(6) 融合・連携をめざした臨港地区制度の提言

 

港湾機能の向上のため、臨港地区への多様な機能の導入とその融合・連携を進める。

 

従来の規制による用途純化から方針転換し、住宅を含む多様な機能の導入とその融合・連携を進めることにより、港と市民との結びつきを強めるとともに、多くの企業にとってビジネスチャンスをもたらす空間とし、港湾・臨港地区の活性化を図る。

1]産業構造の変化に対応するため、商港区と工業港区の融合化を進める。そのため商港区において加工・組立的な製造業の立地を認めるるとともに工業港区において流通業務機能を認める。

2]港湾機能の向上に寄与するため、物流をはじめとした従来の港湾機能と調整を図りながら、一般市民も対象とした商業・業務等の都市的機能の導入を促進し、港と市民との結びつきを強める。(このことが交通アクセスの向上・利便施設の立地をもたらし、港湾で働く人々の就業環境改善にもつながる。)

3]防災上や人と貨物の錯綜等の問題の発生のおそれのない地区については、港と市民との結びつきを強めるとともに、港湾機能の向上につながる住宅の立地を認める。

 

臨港地区は、港湾における諸活動の円滑化を図り、水域と一体となって港湾機能を確保できることを目的としている地区である。そのため、従来は物流機能と生産機能を基本とし、かつ、それらの区域を明確に区分することによって、港湾活動が円滑に行われるとともに、地価水準を低く保ち、一般的に地価負担力の弱いといわれる物流事業者の活動が容易になるよう配慮されていた。このことが全体として港湾の機能発揮に役立っていた。

しかし国際分業体制の進展やウォーターフロントヘの市民の関心の高まりなど、経済・社会の変化がある中で、従来の分区規制による土地利用純化・限定の方針では港湾が充分に生かされない状況になってきている。

具体的には、世界の生産体制が垂直分業から国際水平分業へと変化し、従来の重厚長大型の生産機能とは異なる、より簡易で、かつ保管配送と結びついた生産形態が増加しているが、現在の分区制度はそれに対応したものではないため、商港区において加工・組立的な工場の立地ができず、対応に苦慮する港湾管理者も多い。また生産機能と結びついた卸流通施設などの立地を望む声も強い。

物流や生産といった本来の港湾機能を維持するため、今までの臨港地区は一般市民を積極的に呼び込むことを避けてきたが、そのため、市民生活が港によって支えれらているにも拘わらず、道路・鉄道・空港などの他のインフラストラクチュアに比べて、港に対する市民の関心は低いと言わざるを得ない。一方で生活に潤いを与えるため、海とのふれあいを求める市民は多く、水際緑地や商業施設はもとより、より生活に密着した住宅への潜在的需要は高い。にも関わらず現在の臨港地区制度で認められている緑地や物販・飲食施設はあくまで物流や生産の付属的機能として港湾での就業者や利用者のためという前提であるため、原則として一般市民を対象とはしておらず、住宅については分区を定めた臨港地区では認められていない。

 

 

 

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