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はじめに

 

世界のコンテナ取扱量の中での我が国の主要港湾が占める比率の低下や基幹航路における抜港の動きなどから我が国港湾の国際競争力の低下が今日指摘されている。その原因として大水深バースをはじめとしたハード面の整備の遅れもさることながら、コスト・時間に代表されるサービス面での立ち後れを指摘する声が国内外に大きい。

こういった港湾の運営という視点で海外に目を向けると、東アジアの主要な港湾においては24時間運用、積極的なEDI化、またシンガポールなどに見られるような民営化されたとはいえ国主導による港湾運営など、我が国に例の少ない運営の方式を実施し、今日の隆盛を築いてきている。

対して大陸欧州や北米の主要港湾においては、港湾は伝統的に地域経済繁栄の原動力として位置づけられており、いわゆる「地主型港湾」と呼ばれる官民共営の運営方式が一般的となっている。また、イギリス、ニュージーランド等では、より一層の民営化による港湾運営の効率化を目指して港湾に関する制度改革が進められ、一定の成果を収めていると言われる。

本調査では、このような内外の情勢から、我が国の港湾運営制度及び先進国が採った港湾の効率的運営について調査研究を実施し、国際競争力をもった港湾の整備・管理運営のあり方として、進行中のPFI方式を更に進め、欧米の地主型港湾をモデルとした「民間主導のコンテナターミナル整備・運営方式」の導入を提言としてまとめている。

さらに、従来は物流や生産に重点が置かれ、かつ、それらが個別に機能していた臨港地区について、規制による用途純化から方針転換し、住宅を含む多様な機能の導入とその融合・連携を進めることにより、港と市民との結びつきを強めるとともに、多くの企業にとってビジネスチャンスをもたらす空間とし、港湾・臨港地区の活性化を図る「融合・連携をめざした臨港地区制度」を提言している。

これは様々な業種の企業や市民を今以上に呼び込むことが、臨港地区を活性化し、人々の生活に潤いを与えるだけでなく、そこに働く人々の就業環境の向上にもつながり、結果として港湾機能の向上につながると考えたからである。

今回の提言が我が国港湾の国際競争力の向上と、活力があり、かつ親しみやすい港づくりに寄与できれば幸いである。

 

 

 

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