これら使用燃料の性状基準、輸送、積込、船内貯蔵等の関連技術も研究すべき課題となる。
(7) 省人化と陸上支援体制
新型推進システムのガスタービン機関や燃料電池を採用する場合は、大きな保守点検は交換して陸上で行うか専門家が必要に応じて実施することになり、従来のディーゼル機関のような船内保守作業の軽減が予想される。この場合、乗員体制の見直しによる運航の省人化が期待できるが、個々の機器の信頼性とともにシステムとしての信頼性の向上、イージーメンテナンスあるいはメンテナンスフリー機器の採用が前提であり、それらの研究も必要。
また、船内の点検保守作業を補うために、機器システムのモニタリングや緊急時のバックアップを行うため陸上支援体制の確立が不可欠であり、SR240「新しいフリートサポートシステムの研究」の成果が期待される。ゼネラルエレクトリック社(GE)が実施している全世界2千機の航空機ジェットエンジンの24時間監視と何かあった場合の連絡・修理態勢(リモートメインテナンスシステム)も参考になろう。
3.4.3 研究の進め方
(1) 新型推進システムの研究開発
新型推進システムの実用化の研究開発には膨大な資源(人、費用)と時間を要す。現在も企業内や共同でいくつかの研究開発が実施されているが、現状の技術レベルや実用化への距離は様々である。2(1)で述べたように、各新型推進システムの現状の技術レベルと将来展望を、他の交通機関、陸上発電機プラント等も含めて再調査し、船舶の新型推進システムとしての技術課題、将来展望を明確にし、その中で、企業独自で実施すべきテーマ、官産学で共同研究・共同開発すべきテーマの仕分けと優先度を示す。
また、現状の新型推進システム(動力源、推進器)は、個別には出力範囲制限があるが、一般的には幅広い範囲をカバーすべく研究開発や実用化が進められる傾向が強い。2(3)で述べたごとく対象船舶によって推進システムの適・不適があることを見極め、特定の船舶のみに特化した推進システムの研究開発や実用化を目指すのも一つの方法。
(2) 新型推進システム採用の船舶の研究
新型推進システムを採用した船舶を考える場合は、やはり推進システムの特色が活かせる船種、船型、航路との関係が重要。但し、その場合、現状の物流をベースにするのではなく、新しい物流の可能性を含めて前提条件を設定することが重要。
これまでも新しい船舶の研究・開発は、提供者(造船所主体)側からの技術面が中心で、実際の使用者(船主、荷主、陸上輸送業者等)側の意見が織り込まれない傾向が強い。一方、使用者側の意見も現状維持の考えに基づく場合が多く新しい発想が生まれにくい面もあるが、使用者と提供者が共同で考える環境が必要。
また、船舶における新型推進システムの実用化を考える場合、どうしても大型商船が対象という固定観念に陥り勝ちだが、自動車用に開発が進められている燃料電池を採用したプレジャーボート等、新たな用途に着目することも求められよう。
(3) 法制面、税制面
新型推進プラントを採用した船舶の導入は、やはり環境負荷の制限をどうするかという取組み姿勢に帰すところが大である。例えば、バルト海や米国沿岸に見られるように、一般の排ガス規制よりも厳しい規制を採用することになれば、新型推進プラントの要求が高まる。
また、エコ車での税制優遇のように、エコシップ(クリーンシップ)の税制優遇を行うことや、排ガス中のCO2、NOx、SOxの量に応じて、船舶の入港税を決める、あるいは、対環境性により燃料の税率を変えるような税制面の改正により、研究開発が加速されると考えられる。