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(2) システム化技術

新型推進システムの場合、単独の動力源のみでも成立するが、ガスタービンと蒸気タービン、燃料電池と蒸気タービン等のようなコンバインドサイクルによって更に高効率が達成可能である。コンバインドサイクルの場合は、どのようなシステムにするかによって性能に差がある。また、エネルギー回収量とそれに必要な装置の重量、スペース、保守、費用等のバランスの問題もある。個別装置の研究開発とともにシステム化とその評価も課題と考えられる。

 

(3) 新型推進システムの評価

新型推進システムは、最終的には船舶に採用された状態で、性能(推進効率、操縦性、寸法、重量)、安全性、環境影響(大気、海水)、保守作業性(労働負荷)、経済性等の総合的評価を行う必要がある。しかし、適用船舶の航路(長距離/短距離、外航/内航)、用途(貨物、旅客、特殊)、船型(大型/小型)、船速(高速/低速)等の前提条件が異なれば、当然のことながら推進システムの適・不適が異なる。また、就航海域によって特殊な環境規制が課せられる場合や、年間稼働率に対する要求、省人数運航等の特別な付帯条件があれば、それらによっても評価結果に差異が生じる。従い、新型推進システムの評価を行う場合には、前提条件や要求仕様による影響度を研究対象に加味すべき。

 

(4) 新しいタイプの船舶

最近、LNG焚きディーゼル機関で発電機を駆動し、船首と船尾にポッド型電気推進システムを装備したフェリーが北欧に就航した。LNG焚きディーゼル機関を採用したのは石油よりもLNGが入手しやすいという地域性もあろうが環境問題を考慮したのが大きな理由。船型は日本国内でも一部のフェリーでは採用されている前後対称船型が、ポッド型電気推進システムによって機関室を自由に配置出来ることと操縦性が良いので出入港の多いフェリーでは大きな効果がある。

これは一例であるが、新型推進システムによって、その特色を活かせる新しいタイプの船舶の可能性を調査研究することも必要。

 

(5) 新船型の研究

ポッド型電気推進システムのメリットが生かせる船種に対しては、ポッド型推進器と船体形状の最適化が研究課題である。これらの研究に際しては、ポッド型推進システム用のCFD解析手法やポッド型推進システムの水槽試験要領と解析手法も新たな課題になる。

 

(6) 関連技術

従来のディーゼル機関の場合には、やや補助的な位置付けあった発電機や電動モータが、いくつかの新型推進システムでは主体となる。これまでも電気推進船は存在するが、今後は、発電機、電動モータ等の小型化、軽量化及びシステムとしての高効率化が重要な研究課題となる。

また、(1)項でも述べたように、新型推進システムは使用燃料が大きなウェイトを占める。ガスタービン機関でも従来のディーゼル機関で使用していたC重油は使えず、上質のA重油や軽油が必要で、その他の新型推進システムではメタノール、LNG、水素等、種々の原燃料や改質燃料が使用される。

 

 

 

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