その他、SOx排出のないメタノールエンジンや水素ガスタービン等の研究開発が継続実施されているが、実用化のためには解決すべき問題がいくつかある。
(3) 新型推進器
通常のプロペラ以外の推進器としては、これまでも採用されてきた二重反転プロペラ、ウォータージェット推進器があるが、最近、大型客船での採用が広まっているポッド型電気推進システムが注目を浴びている。
ポッド型電気推進システムは、推進プロペラを直結駆動する電気モーターを内蔵した360°旋回可能なポッドを船体に取り付けるもので、据付の容易さ、操縦性能、船内スペースの有効利用等のメリットがある。推進性能面に関しても、従来のプロペラ推進と比較して効率が向上したとのレポートもあるが、比較条件やその他解明すべき技術課題がある。現在、ポッド型推進システムは、ABB/KvaenerのAzipod、Alstom/KamewaのMermaid、Siemens/SchottleのSSP、STN Atlas/LipsのDolphin等が公表されており、各々プロペラ配置、電動モーターのタイプ、冷却方式等、独自の仕様となっている。
また、実験船「ヤマトI」の航走実験等により将来の舶用推進システムとしての可能性を示した超電導電磁推進システムは、プロペラという枠を超えた斬新な推進システムであるが、実用化のためには超電導効率の向上等、解決すべき技術課題が多い。
3.4.2 技術課題
(1) 新型推進システムの現状技術レベルと将来展望
上記のごとく新型推進システムの動力源候補であるガスタービン機関、燃料電池、メタノールエンジン、原子力機関や、ポッド型電気推進システム、超電導電磁推進システム等、種々の動力装置及び推進システムの研究開発が、国内外の企業、研究所で実施されているが、現状における技術レベルは、まだ基礎研究のものから実用化の域に達しているものまで千差万別である。
今日のように地球環境保全が大きなテーマとなり、従来の経済性からの省エネ要求ではなく、排出物を減少させるための省エネがクローズアップされ、メタノールや水素等のクリーンエネルギー源への転換の期待が出てきている現状では、あらゆる分野で、環境負荷低減対策や新しいエネルギー変換システムの研究開発機運が加速される傾向にある。船舶関連でも(社)日本造船研究協会で燃料電池電気推進船の要素研究、要素実験と総合評価実験を平成6年度〜8年度に実施したが、最近の自動車用燃料電池の研究開発状況等を考慮すれば、船舶での実現化の可能性もより高くなる。
従って、舶用推進システムのみに囚われず、航空機、自動車、車両等の動力源や陸上発電施設を含めた分野の技術開発動向(研究テーマ、研究機関、現状技術レベル、将来展望等)のデータベース化と船舶推進システムへの適用の可能性を追求することが必要であろう。また、新型推進システムの動向を左右する、使用燃料の製造、改質、貯蔵等に関する技術も重要課題として調査研究が必要。