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3.4 「新型推進システム」

 

3.4.1 基本認識

 

(1) 新型推進システムの要望

今日の舶用推進システムはディーゼル機関によるプロペラ推進が主流となっているが、地球環境問題に関連し、舶用機関から排出されるCO2やNOx、SOxの低減が極めて重要なテーマとなり、我が国が講ずべき地球温暖化対策の一環として2010年までに船舶のエネルギー消費効率3%改善を図ることが取り上げられる等、これらに対応可能な舶用推進システムへの要求が高まっている。

舶用推進機関の中で最も大きなシェアを占めるディーゼル機関は、最新技術による高出力、低燃費化とともに、IMO規制に対応した排ガスのNOx低減対策等が採用されつつあるが、基本的な補機類、重量、スペース、メインテナンス、機関室内環境等は、従来のものと比べて大きな変化はない。推進器に関しても通常のプロペラ以外に、高効率化を図った二重反転プロペラ、高速船での採用が多いウォータジェット推進器等が挙げられるが、全体比率としてはわずかである。

今後21世紀に向けては、新たな海上輸送システムの構築が望まれ、新しい船舶の舶用推進システムについても、物流、環境問題、安全性、作業性等の総合的な観点からの検討が必要になってきている。

 

(2) 新型推進動力源の現状

ディーゼル機関に代わる新たな動力源の候補としては、ガスタービン機関、燃料電池、メタノールエンジン、原子力機関等がある。

ガスタービン機関は、その構造及び燃焼形態からNOx排出量がディーゼル機関に比べてはるかに少なく、軽量、低振動、低騒音でかつメンテナンスも容易なことから、舶用エンジンとして30年以上前から注目されているが、初期コスト、燃料等の経済的理由から、これまでは艦船や一部の高速船にしか採用されていない。しかし、現在国内で研究開発を実施している小型のスーパーマリンガスタービン(SMGT)やNorthrop Grumman、Rolls-Royce、CAE等の世界的なガスタービンメーカーによって国際共同開発が進められている中間冷却/再生器付き大型ガスタービン(WR-21)は、燃費をディーゼル機関に近いレベルまで低減させることが可能になっており、新しい舶用エンジンとして大いに期待される。

また、燃料の持つ化学エネルギーを利用することによって環境負荷が少なくエネルギー総合効率が高い燃料電池は、電解質の種類によってリン酸型(PAFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体電解質型(SOFC)、固体高分子型(PEFC)等のいくつかのタイプが研究開発されている。燃料原種として天然ガス、ナフサ、メタノール、石油、石炭等が使用されるが、最終的には水素と酸素の反応による水(水蒸気)の発生となり、環境面で非常にクリーンな動力源である。燃料電池の中で、将来の有望な自動車用動力として開発が進められている固体高分子型燃料電池(PEFC)は、作動温度が低く負荷変動特性に優れ、振動、動揺にも問題の少ないことから船舶推進用電源としても有望である。また、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)も大出力化が可能で振動、衝撃等に強いことから大型船の推進用電源として可能性がある。

エネルギー効率の面で最も有効な原子力機関は、世界的には潜水艦や艦船に採用され、一般商船でも我が国初の「むつ」を含めて実績があるが、まだ化石燃料が当面使用可能という状況と原子力アレルギーの面から普及するには時間がかかると予想される。

 

 

 

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