・外貿コンテナの海上へのモーダルシフト
・静脈物流の検討
・河川物流の検討
次世代内航船を考える際に、海運・物流はそのあり方を規定する上流要素として重要である。海運が域内物流で有意な地位を占める欧州においてもそのシェアの維持拡大のために種々の提案・試行がなされている。
3.3.3 研究のすすめ方
複数の社会機構から様々な制約と影響を受ける内航船と内航海運は、単一の施策では技術革新の恩恵を享受することもままならぬ状況にあるので、変革に備えて合理的な内航船と内航海運システムの青写真を準備しておくことが混乱を最小限に抑え社会的な損失を防ぐための方策として必要である。
地球温暖化防止の国際条約で決められた達成年度は、ほぼ2010年で至近距離にあるので早急に対策を講ずる必要がある。内航船の合理化には個別の対応では有効ではなく制度面と技術面で総合的な見直しと対策が必要である。時代は情報社会への移行期であり、情報技術を前提にそれを十分に活用する新しいシステムとして再構築するに他ならない。
なお、海運造船分野での実効ある対策とそのアッピールがなければ、炭素税導入という経済規制を誘導することになる可能性がある。揮発油税に代わる炭素税導入となると重油価格の上昇は揮発油税のそれより大きくなり、海運に不利となることも念頭において積極的に地球温暖化防止の研究を行うことを社会にアッピールする必要がある。
3.3.4 補足説明
関連事項およびやや詳細な検討について以下に補足する。
(1) 将来の輸送量
中長期的に見れば、荷主企業の物流合理化を主要な目的とする合併や業務提携などによって、輸送量自体が減少する。さらに、今後の高齢化社会と製造業から情報産業を機軸にした国家への移行により工業用基礎資材の輸送量も減少が予想される。
(2) 航行海域の波浪等の海象条件を十分に反映した船舶設計
耐航性能の向上により就航率と定時性の確保が可能になり、物流ニーズに適合した使いやすい船に近づく。海象データベースによる近海域の平均波周期が5秒程度であり60m程度の波長が支配的であることと60mから80mに偏在する内航船の船長分布は合理的とは云えない。同一の運航限界の条件下で現状と法的規制による制約条件をはずして大型化した船舶の就航率の向上を定量的に評価し、輸送実態や運航費等を総合的に判断することが重要である。また、実海域の航行で船体運動や波浪による抵抗の少ない要目の選定や船型の開発と船員、税制等の優遇規制策は整合を図ることが必要である。規制緩和がなされるなら上記を考慮した新経済・環境親和型船型を開発、普及することが適切である。具体的には現状の同規模船より船幅が狭く船長が長く、船速の速い場合には喫水線上の船型や風圧抵抗にも工夫がなされる。また、シーマージンや主機馬力の選定においても実際的な運航状況に留意する必要がある。