4-1) 船およびその構成要素の性能向上
主機関や船型・推進器の改良によるが、それぞれは既に改善が重ねられているので技術的には大幅な性能向上は期待できない。従って、地道な努力と要素技術の積み重ね、および、システム設計に依存する。後者は基本的に性能向上とコストとの関係によるので省エネ装置の低価格化も含めた対応とともにLCAの観点から総合的な評価と合理的なシステム設計が定着するような発想の転換も求められる。また、大手造船会社とは技術水準が異なる中小造船所においては船型改良や合理的な設計の余地も多分に残されている。
4-2) 船体の大型化
造波抵抗はフルード数に大きく依存するので、排水量と船速が一定の時には船の長さを大きくすると船体抵抗が小さくなり燃料消費量は少なくなる。船の要目は性能、構造、船価、あるいは運航条件等により選定されるが、内航船の場合にはトン数や船員数に関する法制上の規定に依存する要素が大きい。これらの見直しが行われて同一の積載量でも現在の船舶より実質的に大型化ができれば燃費とともに耐航性の向上や就航率の改善も期待でき、新たな枠組みの下に船型開発が可能になる。
4-3) 運航方式の対策
減速による燃料消費量の低減は顕著であるのでサービス水準を維持しながら合理的な減速を検討すべきである。自主的対策としては、船陸間通信を充実させミッションに照らして不要不急の高速航行を行わない等の合理的な減速法が可能である。次の輸送がない帰港時の減速はすぐに実行可能な対策である。厳しい対策として燃料価格への環境税付加等の経済的規制が実施されれば、省エネ対策は更に強化され全体的に低速運航が誘導されよう。
このように、安全やサービスのみならず環境保全に配慮した運航方式を開発する必要がある。
4-4) 物流合理化
さらに遡って不必要な物流を削減する物流合理化によって燃料消費量を削減することも重要である。その際には、輸送システム全体を大型化することによって輸送の合理化を行うことができる。そのためには現在の輸送システムの分析により、大型化のネックはどこか、たとえば、各企業の倉庫容量か、桟橋等の港湾施設かを明らかにする必要がある。また、全体の効率化と個々の木目細かなサービス水準との兼ね合いが問題となる。
4-5) モーダルシフト
運輸部門の燃料消費の大部分は自動車である。トラック物流を燃料消費原単位の小さい海上ないし鉄道に振り替えるモーダルシフトによって、海運の燃料消費量は増加するが運輸部門としては減少する。現状の鉄道貨物輸送ではJR貨物のシステムが飽和しているし産業基礎資材は既に海上輸送に依っているから、フェリー・RORO・コンテナ船などを利用したユニットロードの海上輸送へのモーダルシフトが特に期待されている。中長期的には、各種の輸送機関がそれぞれの特性を活かして役割分担する多様なモードの物流システムの実現が目標となる。それは輸送サービスとその利用者および社会の公正なコスト負担に対する合理的な評価に基づく“究極のマルチモーダル政策”とも云うべき総合的な施策である。
今後も物流事情の急激な変化が予想されるのでそれに適応する船舶の設計が重要となる。そして、その合理的な設計やシステムを可能にする関連法規や税制の見直しが必要である。こうした対策のうち、とくに船体の大型化は現実的であろう。