3.3 「地球温暖化防止と次世代内航船」
3.3.1 基本認識
(1) 内航海運と内航船の現状
四方を海に囲われた我が国で内航海運の役割は重要であり、トンキロ輸送量では約40%を担っている。道路交通網の整備にともないトラック輸送が発展し国民が利便性を享受しているが環境汚染をはじめとする多くの問題点があり、その解決のためにモーダルシフト政策が推進されている。環境負荷の小さい海運も船の特性として高速化による経済性の低下および海陸一貫輸送システムの未整備のために十分にその受け皿となっていない。また、海象に依存する運航の不確実性等の原因により得意とする原材料・半製品の輸送でもシェアを減らす逆モーダルシフトが生じているし慢性的な船腹過剰の状態にあり構造的な不況に喘いでいる。
内航海運界は環境保全のための新たな規制を受け入れ、同時に無意味な規制を撤廃ないし緩和するという両面の変化に晒されている。また、海運を担う内航船もそれに見合う近代化が必要であり、常識に流されずに原点に立ち返えり新たな制度や技術の検討をしなければならない。
(2) 地球温暖化防止の考え方
次世代システムを考える際に地球環境保全は最大の留意点の一つである。京都会議(COP-3)の目標は我が国はほぼ2010年において1990年を基準にして6%のCO2等の温暖化ガスの削除を行うということである。運輸分野においても部門別の行動計画が策定されている。海上輸送分野においては環境負荷の大きいトラック輸送からのモーダルシフトとして鉄道と内航貨物輸送を推進するとともに、船舶はエネルギー消費原単位を2010年までに1995年度比で約3%の改善を図ることが「地球温暖化対策大綱」(地球温暖化対策推進本部決定)に決められている。気候変動枠組み条約は、経済社会の存続のために世界が協力して達成する目標を毎年締約国会議で定めている。実効性ある政策の実行を国際社会に数値目標をあげて約束するので国民にも強い規制を強いるものであり、従来のエネルギー多消費社会の反省なしには成り立たない21世紀の規範と認識すべきである。
(3) 社会構造と規制緩和
市場原理と各国政府の直接管理を離れたグローバルな資金がわが国の経済社会および政治のあり方を大きく変える歴史的段階に立ち至っている。護送船団方式の日本的経営や慣習と時代遅れの枠組みから解放されてグローバルな規範による公正な競争型社会として我が国が再生するためには、規制緩和が必要である。
世界単一市場で競い合う多国籍企業である外航海運とは対称的に、内航海運はこれまで多種の規制等の保護政策のもとに零細船主による前近代的な企業経営が長年温存されてきたため、船腹調整制度の廃止などによって突然大規模な構造変革の起こることが予想される。
(4) 物流の合理化と次世代内航船の要件
物流の担い手として我が国の社会に貢献する内航海運は安定した廉い運賃・魅力的なサービス・環境・安全などの目標を達成するため制度と技術の両面において変革が必須であり、内航船も環境負荷の少ない使い易い船として近代化が必要である。ここでは地球温暖化防止の視点を中心にその要件をまとめる。