従来、MBA取得などが主流だった大学院における社会人の継続教育が、工学分野でも議論されるようになってきたが、これが上記の要請に応えうるものか調査する必要がある。この際、大学で提供できる教育プログラムは現状では基礎学術に関するものが主体であり、一方社会人学生は実践的な教育プログラムを指向する可能性が高く、このままでは有効に機能しない可能性が高い。社会人コースは、大学・国研・産業界の連携プロジェクトとして企画し、講師陣に国研や企業からの多彩な人材を配置することが肝要である。また、修了後には学位とともに現在検討が進められている技術者資格認定にも有利な取扱がされるような仕組を立案すべきである。
このような産官学の連携のためには、より産業に密接した特定の講座の開設と大学人と企業の実務に精通した人との、相互の知識あるいは経験を生かした講座の充実を大学人とともに考えるべきである。このような組織を大学に開設する場合の仕組み、たとえば、寄付講座の設置の仕組み、あるいは民間で共同で教育機関を開設する場合の仕組み作りを行うべきであろう。
(3) 情報化時代の教育システム開発
断片的デジタル情報から知的概念を抽出し、知識体系化の指針を与える役割が現代の大学に求められている。即ち、現在暗中模索中の「デジタル時代の思考法」とでもいうべきものの確立である。そのために学部・大学院レベルの専門教育における流体、構造、設計などそれぞれの分野で船舶海洋工学固有の学問体系を明確化するとともにその「デジタル時代の思考法」を呈示する必要がある。大学における教育研究組織の拡散的傾向の中でこれを実施するには、今後の大学組織の再編なども考慮し、大学間協力あるいは学会の活動として日本全体で分野別の電子教科書編纂のプロジェクトやネットワークを利用した教育システム開発に取り組む必要がある。