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3. 検討の内容

 

3.1 「変化する社会の要請に対応した技術者教育」

 

3.1.1 趣旨

 

(1) 背景

高人件費・高齢化・少子化の進展の中で将来もあくまでわが国で一定数量の船舶海洋構造物を建造するとすれば、国際競争力を強めるための設計・建造の一段の効率化が必須であり、この観点から、情報化および自動化技術の導入が推進されている。一方、新しい市場を生み出すような豊かで斬新な企画の立案には、専門分野の深い知識とともに、世界に通用する社会全般にわたる広い教養と深い洞察力が求められる。今後の技術者教育には、遊びの精神を育むと同時に体系化された高度な造船技術についての教育を行う必要があり、現在の船舶海洋工学の教育研究体制には質的および量的転換が必要である。

(2) 「技術者教育の目標」

目標として以下の項目をリストアップした。

●社会変化に対応できる技術者教育

●知識の体系化と継続的発展を促すメカニズムの構築

 

3.1.2 現状の問題点

 

設計・建造の効率化の観点から、情報化および自動化技術の設計・建造プロセスへの導入が推進され、対応する教育も行われているが、システム開発者を自前で教育するのか、ユーザの立場に徹するのか必ずしも明確でない。

また、わが国において新しいマーケットを生み出すような革新的発想による船舶がないことも問題である。LNG船、自動車専用運搬船などは、みな外国のアイディアであった。TSLやメガフロートの開発が行われているが、これらを実用に供するためには周辺分野を含めた社会的センスの必要性が強く認識されている。

従来、海運と造船は狭い意味でのそれぞれの専門領域で別個に活動していたが、最近では船陸通信による陸上からの航海支援など海務と造船技術の接点に位置するような研究が始まっており、今後、海上輸送・港湾・陸上輸送を統合した物流システムとしての技術開発、船のライフサイクル・サポートのための技術開発など、ここでもまた周辺分野を統合化した社会性の強い技術開発の必要性が認識されている。残念ながら、現状における造船技術教育が果たしてこのような社会変化に十分対応できるのか疑問である。

数回の不況による人員削減と若年層の造船業への就業減少に伴い、設計・建造・保守に関して蓄積された高度な知識の体系化や継続的発展が困難となり、今後10年以内に急激な技術力の低下が生じることが、危惧されている。また、内航海運を支える中小造船業は需要急減により大規模な企業淘汰に直面しており、環境問題に対応した新しい国内物流の在り方などを積極的に検討する技術的対応能力を失いつつある。

具体的問題点をリストアップすれば、

●断片的知識の集積による情報の爆発と知識の体系化への努力不足

知識の体系化による情報圧縮、情報教育は革新的設計につながるか?

大学生の基礎学力の低下、船舶海洋工学系の大学教育体制の再構築

 

 

 

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