日本財団 図書館


2.3 調査検討結果の概要

 

1] 「変化する社会の要請に対応した技術者教育」

今後の技術者教育には、豊な想像力を育むと同時に体系化された高度な造船技術についての教育を行う必要があり、現在の船舶海洋工学の教育研究体制等には質的および量的転換が必要である。本調査では、社会変化に対応できる技術者教育、大学教育の再構築、熟練技術者の減少と少子化への対応等を目標とし、情報の爆発と知識体系化への努力不足、体系的生涯教育システムの不備、熟練技術者の急減と若年技術者の減少、等の問題点に対し、大学、国、産業界のそれぞれの立場から、「先進的プロジェクト研究への参加育成」、「研修制度」、「資格認定制度」、「特定講座の開設」、「デジタル時代の思考法」等についての検討をした。

 

2] 「船舶の Life Cycle Return」

市場によって決められる価格から期待する利益を差し引いた額(Cost)で製造を可能とする課題に努力を傾けようとするとき、その船舶の製造段階だけで課題を解決することは困難であり、船舶の運航、保守、使用上のサービスといった領域まで踏み込んでライフサイクルにわたる活動を通して収益(Return)を考えることが必要となっている。船舶の建造・運航・保守・解撤・再利用といったライフサイクルで展開される事業のなかで、造船・海運業の収益性を改善させるために、近年の高度情報化技術を活用した事業のあり方を考察する。物流・海運・造船の今後の情報化の進展をにらみながら、船舶・海運業界の収益(Return)に寄与する技術課題として、船舶のライフサイクル・モデルやライフサイクル・サポートシステムの確立といった情報通信技術の促進・活用を提案し、事業展開の方向性を検討した。

 

3] 「地球温暖化防止と次世代内航船」

内航海運は国内物流の約40%を分担しているが、深刻な社会構造的な問題を抱えている。地球温暖化防止策として運輸部門のCO2排出削減のニーズも相俟って海上輸送へのモーダルシフト政策が推進されるとともにエネルギー消費約3%の改善が求められている。このような厳しい情勢の中で、国内海上物流の担い手としての内航海運が発展していくためには、安定した輸送、サービス、環境、安全などの目標を達成するため制度と技術の両面において変革が必要であり、内航船も環境負荷の少ない使い易い船として既存の規制(499GT等)を前提としない近代化が必要である。

技術課題としては、(1) 省エネ船型のカスタマイズ化設計等の性能向上、(2) 近海域の波浪に対応し、就航率の良い船型の大型化、最適化、(3) 情報化技術による配船等の最適化と減速による省エネ、(4) 物流ソフトウエア技術の検討等を早急に検討(温暖化防止の達成年度はほぼ2010年)し、合理的な内航船と内航海運システムの青写真を準備する必要がある。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION