5.4 Suezmaxタンカー(バラスト状態)と試解析船の衝突解析
試解析船に詳細解析に用いられた標準Suezmaxタンカー(バラスト状態)が15knotで衝突した際の、崩壊挙動の解析を行った。試解析船とSuezmaxタンカーの相対的な位置関係を図15に示す。前述のように衝突船の船首を剛として、図16のように段階を追っての崩壊挙動の解析を行った。
貫入量と反力の関係を図17左に示す。今回も、崩壊がある程度広い範囲に起こるため外板における平均的なStretchingによるひずみは比較的小さく、外板の破断は起こらず荷重は単調に増加する。
また、簡易式を用いSuezmax級タンカーの船首の圧壊挙動を求める。ただし、形状、構造様式としては詳細解析で用いられたSuezmax級タンカーのバルバスバウを用いた。これを用い、圧壊量と荷重の関係は図17右のように表すことができる。
この関係を用い、双方の崩壊挙動を考えた解析を行う。図18のように、船首の貫入量と反力、船側の貫入量と反力のグラフを並べて描き、反力のバランスを考える。
船首のはじめの隔壁までが完全に圧壊するまでをS1、2番目の隔壁までが圧壊する位置をS2とすると、それぞれの場合での吸収エネルギーは表4-2のようになる。構造崩壊により吸収すべきエネルギーは232MJであり、ほぼS1の所までの崩壊で終わるものと思われる。このとき、被衝突船のほうの貫入量はおよそ1800mmである。また、この際の船首、船側双方の吸収エネルギーの比は詳細解析によるものとほぼ一致する。また、S2の所まで崩壊が進んだ場合(2倍以上のエネルギーを吸収する)でも被衝突船のほうの貫入量は2250mmである。この解析から、試解析船はSuezmax級のタンカーの衝突に対し、エネルギー的には2倍以上の安全度があるといえる。