4. 詳細シミュレーション解析法を用いた損傷解析
4.1 詳細シミュレーションの目的
詳細解析の実施目的は、(1)「海査第520号:照射済核燃料等運搬船構造及び設備に関する特別基準」では直接的に考慮されていない“最近の大型船”と“照射済核燃料等運搬船”との衝突事故時に発生する構造破壊の範囲と程度とを推測する、(2)2船の相対的構造強度差が考慮された試解析の結果から、照射済核燃料等運搬船の耐衝突「実態」強度レベル(実際にどの程度の衝突船まで許容可能か)を把握する、(3)別途適用を試みる簡易解析手法との相互補完に向けた技術データ(精度照合データ)を供する、事にある。
4.2 想定衝突事故シナリオ
3.2.1に示す様に潜在的衝突船としては、「海査第520号:照射済核燃料等運搬船構造及び設備に関する特別基準」で想定するT-2タンカーと同等速度レベル(約15ノット)或いは高速度レベノレでより大型(載貨重量で約2万トン以上)の船舶が多数存在する事が判っている。船種別隻数の観点からは、タンカー又は撒積貨物船などの低速肥大船の占める率が90%以上と高く、コンテナー船などの高速痩せ型船の占める率は10%以下と低い。そこで詳細衝突解析で想定する衝突シナリオでは、T-2タンカーと併せて二種類の大型低速肥大船(現存する最大級:載貨重量で約29万トンのVLCCタンカーと、その半分程度のサイズ:載貨重量で約14万トンのSuezmax級タンカー:共に航海速度は15ノット)及び、一種類の大型高速痩せ型船(現存する最大級:積載コンテナー数で約6200TEU級の超大型コンテナー船:航海速度は23ノット)の合計4種類の船舶を代表的な衝突船候補として選択した。
4.3 解析コード及びモデル化
船舶同士の衝突による構造破壊を解析には、造船業基盤整備事業協会によって開発された、有限要素法(FEM)コードであるLS−DYNAの専用バージョンを採用した。本コードでは、衝突時に発生する船体運動も連成させて解析される。
被衝突船としては、現在国内輸送に従事している代表的な照射済核燃料運搬船(排水量で約7000トン)を選択した。運搬船の外観を図3-1に示す。被衝突船の右舷船倉(1番倉中央から5番倉中央まで、実質4船倉長さ範囲)が弾塑性変形・破断可能な有限要素でモデル化されている。その他の部分は、外形状のみを表現する剛体要素でモデル化されている。衝突船では、船首前端から衝突隔壁近傍までの範囲を弾塑性変形・破断可能な有限要素でモデル化、その後方の部分は、外形状のみを表現する剛体要素でモデル化されている。図3-2から図3-6に有限要素モデルを示す。表3-1に衝突船・被衝突船の主要目一覧を示す。表3-2に各詳細モデルの要素規模を示す。