5.1.5 衝突時減速成功確率
衝突時に減速し衝撃を和らげ、タンク破損範囲を限定する対応が取られる確率を評価した。2.2.4における油タンク破損解析によると、「Single hullの中・小型船」の場合、船速を10ノット以下に落とすと外側タンクのみの破損で押さえられるという結果が得られている。その他の船種についての解析では、10ノット以下に自船速度を落とす効果は破損タンクの数には現れていない。INF3の場合、満載状態で13ノット運航中に10ノットまで減速するのに要する時間は1分以内であり、また、通常の船に比べ衝突予防援助装置付きレーダー等を用い厳しい監視をして航行している。従って、万が一の衝突事故時においても高い確率で10ノット以下に減速することが可能と考えられるので、減速成功確率を90%と設定した。
5.1.6 油流出の確率
2.2.4において被衝突船・衝突船の破損状況を修正ミノルスキーの式を用いて解析している。その解析結果を用いて、衝突時に油タンクが破損し、油が海洋に流出する確率を算出した。被衝突船のタイプ別の検討結果は次の通りである。
1]Single hull−大型船(14.7万GT)
船速に関係なく縦通隔壁の損傷に至らないので、外側タンクのみから油流出を生じる。船速によって最大損傷長さが異なってくるが、最終的に、油タンク損傷確率は0.555と算出される。
2]Single hull−中・小型船(5.3万GT)
衝突時10ノット以下に減速した場合は、縦通隔壁の損傷に至らないので、外側タンクのみから油流出を生じ、損傷確率は0.380となる。また、減速せずに13.2ノットで衝突した場合は、縦通隔壁が損傷して内側タンクからの油流出が同時に生じ、衝突箇所により破損タンク数が異なってくる。衝突箇所が横隔壁の上だった場合は、内側タンクが2つ損傷するが、その発生確率は0.159となる。また、衝突箇所が外側タンク中央部だった場合は内側タンクがひとつ損傷し、その確率は0.221となる。
3]Double hull−大型船(16.4万GT)
衝突時10ノット以下に減速した場合でも、船側の二重船殻構造は損傷して、外側の油タンクから油流出を生じる。衝突箇所が横隔壁の上だった場合は、隣接する2つのタンクが同時に損傷する確率は0.102となる。また、衝突箇所がタンク中央部だった場合は、タンクが1つ損傷し、その発生確率は0.647となる。
4]Double hull−中・小型船(7.7万GT)
3]と同様の考え方によって計算した結果、隣接2タンクの同時損傷の確率は0.212となり、また、油タンク1槽のみ破損する確率は0.587となる。
以上の結果をイベント・ツリー形式にまとめたのが図14である。同図には2.2.4で検討した破損油タンクの合計容量も記入されている。
5.1.7 確率論的影響評価対象被衝突船タイプの選定
4.3.2における解析結果から、800℃の海面火災に曝された場合、約15時間後にガスケットが180℃となり、安全解析書に記載された短期ガスケット使用温度の基準である178℃を上回る恐れがある。