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他船から消火支援を受けた場合、所要鎮火時間は最大30時間程度と考えられる。なお、外洋においては他船からの消火支援は期待しにくい。但し、衝突事故は、船舶の航行が多い、湾内や海峡など比較的陸地から近い海域で発生しており、陸地から遠い外洋では航行する船舶密度が非常に低いので、衝突発生確率は非常に低く、高性能な航海機器を装備する大型船にあっては衝突発生確率は更に低くなる。

また、IAEAのCRPのTECDOC[15]に海上火災が1日以上持続する事例は10%程度であると報告されているが、船倉内の貨物に熱的影響を及ぼす火災の持続時間については記述されていない。一般に、海上火災に関する事故事例の調査からは海上火災の持続時間は判明するが、海面火災のみ、あるいは船上火災を含めた持続時間なのかは判明しない。更に、火災が持続していたのか、鎮火した後に再着火したのかに関してもすべての事例に対して判明しない。そこで、現象論的ではなく、タンカーの有する火災に対する潜在的なポテンシャルについて仮想的に評価してみる。海面火災の持続時間に関して輸送物の安全裕度を確認するという観点から、最苛酷シナリオとして超大型タンカーの破損した油タンク内から全量の油が海面に連続して流出することを想定する。事故事例からは、最過酷な海面火災の持続時間は再着火現象を含めて20数時間と想定される。鎮火してから再着火するまでの火災休止期間は、船倉への入熱はなくなり、輻射や対流により船倉内の温度が低下することが想定されるが、この火災休止期間を評価することができないので、保守側に海面火災が持続すると仮定する。また、完全に鎮火した後の輸送物のモデル化を簡素化するため、最苛酷シナリオとしては800℃の海面火災事故が30時間持続するという仮想的な条件を設定した。

以上の結果から得られた輸送物の健全性評価用と安全裕度確認用の海上火災のシナリオを表2にまとめる。

 

表2 海面火災事故シナリオ(解析対象条件)

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