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7. 限定近海船に対する満載喫水線基準案の検討

 

7.1 はじめに

昨年度までに、乾舷の大きさと船の安全要素との関係を整理し、内航船の船型の現状及びその航行実態を踏まえ、合理的な満載喫水線基準を作成するために考慮すべき事項の検討を行ってきた。ここでは、初めにこれまでの議論を踏まえた基準作成の考え方の整理を行う。次に、それを基に限定近海船に対する具体的な検討を行う。

 

7.2 満載喫水線基準の役割

現行の満載喫水線基準では、一定以上の水密性や船員の保護設備等を備えた船舶において、最小の乾舷及び船首高さを規定することにより、満載喫水線より上部の水密区画の容積(予備浮力)や乾舷甲板等の海面からの高さが安全上適切なものとなるように定めている。その結果、復原力の重要な要素である予備浮力が確保されるとともに、甲板上への海水打ち込みが制限され、転覆の防止、開口部からの浸水の防止(ひいては沈没防止)や暴露甲板上で作業する船員の保護等の安全性が担保されることになる。これらの関係を図3.1に示す。

このうち海水打ち込みに対しては、乾舷甲板等の海面からの適切な高さによる打ち込み水の制限、船員保護設備の設置による暴露甲板上での安全性確保及び出入り口やハッチの保護による船内へ浸水の防止、更に、船内に浸水した場合に予備浮力による安全性確保(沈下・沈没防止)といった多段階の状況が満載喫水線基準で考慮されていることになる。また、海水打ち込みの制限は、復原性や暴露甲板上の構造設備の強度等に関する基準の前提となっており、船の安全性確保に対して満載喫水線基準の果たす主要な機能と言える。

 

7.3 内航船の満載喫水線の現状

現行基準の上では、沿海基準の乾舷と遠洋・近海基準の乾舷では違いが大きい。そこで、限定近海船の基準を検討するにあたり、現行の内航船の現状を把握する。現行の内航船は、船種で分類すると貨物船及びタンカーが大半を占めている。

沿海区域を航行区域とする貨物船はその多くが二層甲板船であり、近海基準の船体の水密性を持って近海区域の最低乾舷である50mmの乾舷で沿海区域を航行している。一方、内航タンカーは現行基準どおりの乾舷で航行しており、これらが限定近海を航行する際の合理的な基準を検討することが本部会での最大の検討課題である。

 

7.4 限定近海船に対する基準作成の考え方

7.4.1 安全レベルの考え方

海水打ち込みの制限から乾舷を考えた場合、打ち込みが全く生じないような乾舷を設定するのは乾舷を必要以上に高くする必要があり合理的ではない。そこで、現行の沿海及び近海を航行する船舶の打ち込み頻度を把握し、限定近海においてそれと同レベルの頻度で打ちこみが発生した場合の浮力や現状の設備要件及び構造強度に対する甲板冠水の水位や荷重が十分であるかを検討する必要がある。

 

 

 

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