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6.甲板荷重の長期予測法の検討

 

6.1 はじめに

船の運航形態を考慮すると、海水打ち込みに伴う甲板荷重等を指標として乾舷を評価する際には、その長期予測値を用いるのが適当であると考えられる。甲板荷重等の長期予測計算を行うためには、短期海面での超過確率を推定する必要があるが、現在のところその推定法が定まっているとはいえない状況である。そこで、規則波中での模型実験結果をもとに船首相対水位と甲板荷重の相関を表わすモデルを考え、それを用いて甲板荷重等の超過確率を推定する手法を開発したので以下に示す。なお、この際の理論的な取り扱いは、以下の仮定のもとに行う。

●船体運動、船首相対水位等のスペクトルは、狭帯域スペクトルであるとする。

●海水打ち込みは、船首相対水位が船首高さを越えた際に発生するとする。

また、以下に示す計算例はすべて正面向波状態で行った結果である。

 

6.2 甲板荷重の短期予測

6.2.1 甲板荷重の超過確率

前章で示した洪水流モデルを用いた甲板荷重等の推定法の検討結果から、このモデルを用いて規則波中での甲板水位及び甲板水量さらに甲板水圧及び甲板荷重を精度よく推定できることが分かった。ここでは、船首相対水位の極大値の確率分布を既知とし、不規則波中における甲板荷重の超過確率の推定を行う。

評価手法として用いるためには、できるだけ簡便な手法である必要があると考えられるので、模型実験の解析結果から船首相対水位と甲板荷重の相関関係のモデル化を行い、その関係を用いて甲板荷重の確率分布を導くこととした。規則波中での実験の解析結果から、今、検討対象としている海水打込みでは、船首相対水位が船首高さを越えた高さ(δ)だけの水がδにほぼ比例する有効幅をもって甲板上に流入することがわかった。また、甲板荷重は甲板水量にほぼ比例することもわかっている。そこで、甲板荷重Fを次式で表わすこととする。

F=αρgB(ηmax-f)2=αρgBδ2 (6.1)

ここで、αは衝撃圧係数、ρは水の密度、gは重力加速度、Bは船幅、ηmaxは船首相対水位ηの最大値を表わす。このように、甲板荷重Fが船首相対水位の最大値ηmaxの関数F=f(ηmax) で表わされると仮定すれば、甲板荷重の確率密度関数pF(F)は船首相対位の確率密度関数pn(ηmax) を用いて

pF(F)dF=pηmax)dηmax (6.2)

で表わすことができる。仮定から、船首相対水位の確率密度関数をRayleigh分布と考えることができるので、変数変換を行うことにより

 

 

 

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