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(5c)考えている代替防火設備・設計が、関係するSOLAS新II−2章の規則が要求する防火要件及び基準を満足することを、考えるべき火災状況及び危険状況に沿って定量的に解析する。この解析の手法としては、

・ISO TR13387: 2000 "Fire safety engineering"、

・The SFPE Engineering Guide to Performance−Based Fire Protection Analysis and Design of Buildings, Society of Fire Protection Engineers and National Fire Protection Association, 1999

あるいは各主管庁が認めるその他の手法を用いることができる。

(5d)解析結果及び判定結果を示し、主管庁が承認した報告書は、当該船舶に保管する。

なお、この指針はIMOで初めての試みであるので、強制的なものとはせず、勧告という形をとることとなり、2001年のFP45にて最終的に作成されることとなっている。

 

2.4.2 高速旅客船へのFSAの試適用(平成10年度調査研究)

あるタイプシップ高速旅客船を想定し、その火災安全性要件について、FSA暫定指針の試適用を試みた。なお、確率統計資料の入手困難性から、作業はFSAのステップ1(危険性の特定)及びステップ3(危険回避措置)について実施し、SOLAS新II−2章案の内容と対比した。

その結果、SOLAS新II−2章案構築においても、火災リスクに関する統計データが揃わない場合には、FSAを実施しても、抽出した火災危険回避措置を新II−2章案に盛り込むかは専門家判断によることとなる。ここで抽出する火災危険回避措置は最大限の措置である。FSAのSOLAS新II−2章案構築への利用可能性としては、火災危険措置をシステマチックに抽出することで、防火要件の漏れを避けることができる点にある。

(1)タイプシップ

現在就航している高速旅客フェリーは、船体構成としては、双胴船と単胴船がある。船内区画割は、操船室、旅客室、船員室、車両区域、機関室、舵機室、燃料タンク等からなっており、双胴船及び単胴船とも、車両区域より上はほぼ同様の配置である。客室は、座席を配置した大部屋であり、個室はない。そこで、単胴船を例として、FSA検討のため、図2.4.2.1のタイプシップを考えた。このタイプシップの主要寸法は特に定めていないが、長さ約80〜100m程度を想定している。このタイプシップでは、喫水線下の区画は、艫から、舵機室(ウォータージェット)、機関室(2つに分割されている)、燃料タンク、空所、前部舵機室(サイドスラスタ)が配置される。その上は、船の全長に亘って仕切りのない車両区域となっている。この車両区域の前部の上には、空調機械や舫のための装置を収める機械室がある。車両区域の上は客室及び船員室が配置される。車両区域から客室へは、A級防火戸を介して階段室で繋がっている。これらの上にはさらに、客室と操舵室がある。2層の客室は開放した階段で繋がっている。1層目の客室内には、コーヒー等の暖かい飲み物や調理しない食物(サンドイッチ、菓子等)を提供する売店、及びトイレがある。

船員室内には、電気式の湯沸かし器を備えるが、調理装置は備えない。

 

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図2.4.2.1 高速旅客船タイプシップ

 

 

 

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