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2.4 SOLAS/II−2章へのFSAの適用(平成10年度〜11年度:船舶艤装品研究所)

国際海事機関(IMO)は1997年5月から6月に開催された海上安全委員会(MSC)第68回会議にて、フォーマル・セーフティ・アセスメント(FSA)を暫定的に一応完成させ、暫定指針として承認し、その試行を各国に要請した(MSC/Circ.829)。また、SOLAS/II−2章(防火関連規則)の総合見直しを行っているFPに対して、その検討の中でFSA暫定指針の適用の可能性を検討するよう要望した(MSC68/WP.13)。また、この検討を通して所見を得た上で、FSA暫定基準を将来さらに改良することとした。

そこでRR42では平成10年度から、IMO・MSCでのFSAに関する議論に呼応して、FSA暫定指針のSOLAS/II−2章総合見直し作業への適用性を調査検討する作業を行い、FSA暫定指針の適用性、妥当性等を検討し、我が国のFSAに対する対処のための諸資料を得た。

 

2.4.1 SOLAS/II−2章の改正の経緯

防火の技術の発展は急速に進み、現第II−2章には規定されていないタイプのスプリンクラ・システムやウォーターミストによる消火装置、あるいは新タイプの高膨張泡消火装置、さらには最新のエレクトロニクス技術を集結した火災感知警報装置などの新しい防火装置が開発され、船舶に搭載されつつある。一方で、大きなアトリウムや劇場、売店式の飲食街などの新しい客船の設計が提案され、建造されている。これらの新技術や新設計については現第II−2章には規定がないため、その都度、火災安全性の評価を行ってSOLAS上は除外規定を用いて個別に安全証書を発行しているのが現状である。

そこで、新II−2章案は、このような新技術や新設計にも対応できるように、船舶の火災安全及び防火の基本要件を明らかに示し、また、各規則が求める要件の骨子を規則毎に掲げ、さらに新技術及び新設計の防火機能の同等性評価方法を定めることとした。この作業はIMOの防火小委員会(FP)にて進められ、平成12年2月のFP第44回会議では、FPとしての最終II−2章案及びFSSコード案が作成された(FP44/4/2、FP44/4/3、FP44/WP.1、FP44/WP.4、FP44/WP.4/Corr.1)。

また、個別の防火設備に関する性能要件は、SOLAS/II−2章からは切り離して、同章によって強制化される防火安全システムコード(FSSコード)に示すこととした。

新II−2章案における機能要件と同等性評価の仕組みは、以下のとおりである。

(1)SOLAS/II−2第2規則に基本要件を示す

(i)船舶火災安全の基本要素を確認し、第2規則1項に示した。すなわち、

(1a)出火の防止:可燃物の制限、可燃貨物への着火の防止

(1b)早期の火災発見:火災発生区画での火災の早期発見・通報

(1c)火災拡大の阻止:防火仕切りによる区画分け、出火場所での消火、消火設備の整備

(1d)安全な避難手段:安全な避難経路及び消火のためのアクセスの確保

(1e)被害の抑制:火災危険区域と居住区域の分離

(ii)基本的な機能要件を抽出し、第2規則2項に示した。

(2a)船舶内を構造的・防熱的に主垂直区画及び水平区画に分割する。

(2b)居住区を構造的・防熱的に他の区画から分離する。

(2c)可燃物の使用を制限する。

(2d)火災発生場所で火災を探知する。

(2e)火災発生場所に火災を封じ込め、消火する。

(2f)避難経路及び消火のためのアクセス経路を保護する。

(2g)消火設備を容易に使用できるように常時準備する。

(2h)可燃性貨物蒸気への着火を防ぐ。

 

 

 

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