日本財団 図書館


−2)FSAの試適用としての考察

最後に、Rule−Makingの為のツールとしてのFSAの観点から今回の検討結果に基づく考察を述べる。今回のような詳細検討の場合には、Hardwareに関する詳細な情報が必要となるが、これらの情報と機能を中心に考えても、汎用化することは難しいと思われる。今回は同定の船舶の固有情報を用いたが、このレベルの情報をもつgeneric modelを構築できるかどうかが、詳細検討を目的とした場合のRule−Making用FSAの大きな課題の一つと言える。逆に言えば、現状では機能を中心に考えてGeneric Modelが構築できるようなハイレベルの問題に対してFSAを使って行くのが望ましいと言える。また、FSA暫定指針には分析的手法と創造的手法の両方が必要と書かれているが、どちらが大きな役割を果たすかについては、過去の事故事例の多さ、データの量に依存すると言える。今回のように比較的事故事例が多い場合は、分析的手法が大きな役割を果たすと考えられるし、逆に事故事例が殆どない場合には、HAZID meetingのような創造的な方法で専門家意見を積極的にとりいれてハザード等を同定し、リスク評価、対策と立案を行う重要性が高いものと思われる。

 

2.3.4 貨物倉の火災・爆発事故に対するFSAの試適用

(1)概要

SOLAS改正(81 Amendment)を例題としてFSAの規則改正への適用性の検討を行った。主としてFSAのステップ1「ハザードの同定」、ステップ2「リスク評価」に相当する部分と、ステップ4「費用対効果分析」及びステップ5「意思決定のための勧告」の考え方を検討した。ステップ3はRCOを新たに検討する代わりに、表2.3.2.3に示す火災安全対策に関するSOLASの規則改正を取り扱い、その有効性の事後検証を試みることとした。また、本研究を通じてFSAの方法論の適用可能性/実用性についても検討した。

尚、ハザードの同定に際しては、過去の事故事例が比較的少ないことから、船舶の設備や運用面での経験や知識が不可欠であるため、船会社の船長経験者等の専門家に対するヒアリング及びアンケート調査を実施して情報を補った。

 

表2.3.2.3 74 SOLAS 81 Amendmentと74SOLASの違い

039-1.gif

 

(2)モデル船と運航状態

Generic Shipとしては、原油タンカーを代表できるものが望ましいが、本検討では、モデル船としてAFRAMAX Tankerを、検討対象の原油タンカーの運行状態としては揚荷役中とした。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION